コロナ禍におけるペーパーレス化の必要性とは?メリット・デメリットや導入ポイントを紹介
コロナ禍におけるペーパーレス化の必要性とは?メリット・デメリットや導入ポイントを紹介
新型コロナウイルスの脅威により、日々の暮らしやワークスタイルは大きな変革を迫られました。 感染リスクを避けるための方策としてテレワークへの移行を進める企業も多く、今ではメジャーな働き方として社会へ浸透しているといえるでしょう。 その中で必要とされているのが、ペーパーレス化の推進です。 今回はペーパーレス化について、意味や定義を整理しつつメリット・デメリットや導入のポイントなどを中心に解説します。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、業務上発生するさまざまな文書を紙媒体から電子データへと移行することです。その対象は、たとえば稟議書や会議資料といった日常的に用いられるものや、顧客情報などをまとめた機密文書など、ビジネスで利用されるあらゆる紙媒体です。
従来一般的であった「紙ベースでの情報管理」を取りやめ、電子化していく動きを指すのがペーパーレス化です。
コロナ禍において働き方が大幅に変化した現在では特に重要視されている施策であり、2021年に東京商工会議所が中小企業を対象に実施したアンケート調査によれば、48.5%の企業が「テレワーク実施の課題」としてペーパーレス化の推進が必要であると考えていることが報告されています。加えて、ペーパーロジック株式会社が実施したアンケートによると、2020年に社内のペーパーレス推進に取り組んだ企業が計75.7%に達することも示されています。
以上の結果からも、コロナ禍以降の社会においてペーパーレス化が重要な施策であることが伺えます。
テレワークの実施において、各資料や文書などを従来のように紙ベースで管理し続けることは難しく、ペーパーレス化は必須だと言えます。しかし、「テレワークへの完全移行を検討したいが、業務上必要な紙媒体がボトルネックとなっている」といった悩みを抱える組織も少なくないようです。
ペーパーレス化のメリットとその重要性
ペーパーレス化の推進はテレワークへの移行促進のほか、業務効率化やコスト削減、環境保全への貢献といったさまざまなメリットを生む施策です。また、政府が推奨する働き方改革のひとつとしても注目されています。
メリットを整理しつつ、その重要性についても理解しておきましょう。
業務効率の改善とコスト削減
ペーパーレス化の持つ大きなメリットとして挙げられるのが「業務効率化」「コスト削減」といった実利的なポイントです。
ペーパーレス化は印刷・文書管理にかかる工数を大幅に削減しつつ、電子データ化による情報活用の推進といったメリットをもたらします。特に紙媒体での情報管理において大きな課題とされていた資料の管理工数を改善でき、手作業で資料を探す非効率の改善や、オフィスへの出社などの手間を省けることは明確な利点であると考えられるでしょう。
さらに、紙への印刷が不要となるため、コピー用紙やインク、文房具などの消耗品費を大幅に削減できるため、コストカットの観点から見ても有用性の高い施策です。
環境保全
ペーパーレス化によってもたらされるメリットは、企業の直接的な利益につながるばかりではなく、環境保全にも大きく寄与します。
SDGs(持続可能な開発目標)に大きな社会的関心が寄せられる昨今では、企業が環境問題へ積極的に取り組んでいるかが注視される傾向にあります。紙媒体は取りやめ各文書を電子データへと置き換えることは、その企業が地球温暖化の防止や森林資源の保護などにつながる前向きなアプローチをしていると、顧客や市場から好印象で捉えられるでしょう。
政府が進める働き方改革のひとつとして重視されている
ペーパーレス化は、政府が2017年3月に発表した「働き方改革実行計画」の一環としても積極的に推進されている施策です。
そもそも、働き方改革を実現するためにはICT技術の活用やテレワークの推進などが必要不可欠であるとされており、不要な業務を生み出す原因の一端に「紙媒体の存在」が関わっていることが挙げられていました。政府はペーパーレス化によって電子データへの移行を進めることが、生産性向上やデジタル化の推進といった目標を実現するために必要な施策であると位置付けているのです。
加えて、1998年に施行された電子帳簿保存法や2005年に施行されたe-文書法など、公的手続きに関わるデジタルデータの電子保存を認める法整備なども以前より継続的に進められています。従来懸念されていた電子データ管理に関する問題は、主にタイムスタンプの付与や電子印鑑の活用といったアプローチから解消されてきています。
ペーパーレス化のデメリット
コロナ禍以降ますます大きな注目を集めているペーパーレス化ですが、導入時の懸念点としてどのようなものがあるのでしょうか。
初期コストがかかる
ペーパーレス化を進めるにあたって、各文書を一元的に管理するためのツールが必要となります。そのほかに、ネットワーク設備やセキュリティ体制の強化、各システムやクラウドストレージのアップグレードなども必要となるため、ある程度のイニシャルコストを要することが懸念されます。
しかし、アフターコロナのビジネスを考えるにあたっては、上述した各種ツールの整備はもはや必須要素といっても過言ではないでしょう。初期費用は必要経費として割り切り、優先的に予算を確保することが結果的に大きなメリットを生み出すきっかけにつながるとも考えられます。
ITリテラシー不足による作業効率低下
初期費用の発生以外に懸念されるのが、仕組みのデジタル化によって各業務を行う従業員に求められるITリテラシーも高まる点です。従業員教育にかかる工数や労力が発生することはもちろん、デジタルデータを管理する側にもアクセス権限などのシステム設定に関する深い知識が必要となります。
社内にペーパーレス化を前提とした業務体制が浸透するまでの期間、従業員間の知識の格差などが影響し、一時的に作業効率が低下する可能性があることはデメリットのひとつとして考えられるでしょう。
システム障害時のリスク
ペーパーレス化の推進は業務のデジタル化を進めることにも深く関係します。そのため、システム障害の発生やインターネット回線の不通、サイバー攻撃などによるイレギュラーの発生時に業務の継続性が妨げられることが懸念されます。
これは紙媒体を主とした業務フローには存在しなかった、新たな課題であるといえるでしょう。非常時のオペレーションや業務マニュアルの策定、セキュリティを担保したシステム環境構築などをあらかじめ進め、リスク回避に務めることをおすすめします。
ペーパーレス化のポイント
ペーパーレス化を社内で実際に進める時には、主に「経営層の理解を深める」「段階的な導入」「運用ルールの細かな策定」などが重要なポイントです。
まずペーパーレス化の導入にあたっては、経営層が率先して具体的な仕様や有用性などについて理解することが重要です。既存の仕組みを大幅に転換する取り組みとなるため、トップダウン的に徹底して進めていくことが成否を分けるともいえるでしょう。
有効なアプローチとしては「会議資料のPDF化」や「社内稟議のシステム化」などから段階的に進めていき、時間をかけて社内に浸透させていく方法などが挙げられます。いきなりすべての紙媒体を電子データへと移行することは現場の混乱を招くため、まずは一部の業務から試験的に取り組んでいくと良いとされています。
取り組みと並行して「データ形式の統一」や「ツールの運用方法」といったルールを細かく策定していき、必要に応じて都度アップデートしていくことで柔軟かつ強固な仕組みづくりを目指すこともできるでしょう。
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ペーパーレス化すべき書類
最後に、優先的にペーパーレス化を進めるべき書類について取り上げていきます。
ビジネス文書
基本的には「すべての紙媒体をデジタルデータに置き換える」ことがペーパーレス化の最終目的ですが、その一環としてまず着手したいのが主に社内で利用するビジネス文書の電子化です。たとえば伝票や社内報、掲示物や稟議書など、社内で日常的に作成されている書類がこれにあたります。
その他、押印が必要な重要文書へのデジタル署名の活用や、FAXの送受信をクラウドサービスに置き換えるアプローチも有効であるといわれています。
会議資料
会議時に必要となる各資料に関しても電子化を進め、会議前には参加者へPDFデータを配布するといったルールを主とすることも優先的に行いたいペーパーレス施策です。
特にテレワークを軸とした働き方が普及した現在では、もはや「資料の印刷」を行うこと自体が非効率ともいえます。画面共有などに対応したウェブ会議ツールを活用し、オンライン上で資料を共有しながら会議を進めていくことがペーパーレス化後のワークスタイルとなると考えられるでしょう。
カタログやパンフレット
自社製品やサービスの情報を記載したカタログやパンフレットなどの販促物も、将来的にはペーパーレス化を進めるべき書類のひとつです。
ダイレクトメールの送付などをPR戦略として取り入れている企業も未だ多く存在しますが、コロナ禍において必ずしもターゲットがオフィスへ出社しているとは限りません。テレワークの普及率が高まる現在では、メールマガジンなどでデータ化したカタログを各社に送付するほうがより多くの反響を得られることも十分に想定できます。
さらに、販促物のペーパーレス化により、デザインの修正や内容の更新といった作業もより簡単に行えるようになります。印刷所への発注などにかかるコストや手間も大幅に削減でき、古い印刷物の処分などの手間もかからなくなることからも、おすすめの取り組みといえます。
まとめ
2021年9月に「デジタル庁」が設置されるなど、日本社会全体が新型コロナウイルスの影響を受け、大きな転換期を迎えています。今後のビジネスを考えるうえで、従来の慣習を優先して紙媒体での業務を続けることは、さまざまな機会損失を招く可能性さえあるといえるでしょう。
テレワークの推進などの影響も受けた現在、改めて自社のペーパーレス化推進を検討してはいかがでしょうか。
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