職場環境配慮義務とは?違反時の罰則について詳しく解説
職場環境配慮義務とは?違反時の罰則について詳しく解説
企業の経営者や管理者は、自社で働くすべての従業員が快適に働けるように「職場環境配慮義務」に対応する必要があります。この義務は、直接労働契約を締結している社員だけでなく、派遣社員や協力会社の従業員など、自社内で働くあらゆる労働者に適用されるのが特徴です。 そこで今回は、職場環境配慮義務の基礎知識や、違反時の罰則について詳しく解説します。
職場環境配慮義務とは?
職場環境配慮義務とは、安全配慮義務のなかに含まれる義務であり、労働者に対して快適な職場環境を提供するよう配慮する義務のことを指しています。
そもそも職場環境配慮義務の基となる安全配慮義務とは、企業で働く従業員の健康や安全を守りながら、安心して働ける職場環境を会社が維持するべく配慮する義務のことで、労働契約法第5条に記されています。
企業において従業員が安心して働くためには、職場で健康や命を脅かされる危険がなく、自身の利用する機器や設備が安全であり、さらに業務内容や雇用条件にも納得している必要があります。
加えて、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどに代表される、さまざまなハラスメント問題が起こらない環境を維持することも重要です。
職場環境配慮義務を守ることは、スキルの高い従業員の流出を防ぎ、さらには企業の成長性を保つことにもつながります。高いレベルでの他社との競争力を求められる現代において、職場環境配慮義務を遵守して優秀な従業員を確保し続けることは、企業にとって必要不可欠です。
職場環境配慮義務が適用される対象
職場環境配慮義務が適用されるのは、その基となる安全配慮義務の適用範囲と同じです。
前述の労働契約法第5条によると、安全配慮義務の対象となるのは自社で働く労働者のうち、「直接労働契約を締結している従業員」だけではありません。「直接労働契約を締結していない従業員」も安全配慮義務の範囲内に含まれます。
つまり自社に所属している従業員だけでなく、協力会社の従業員や派遣社員など同一環境下で働くすべての労働者が安全配慮義務の適用範囲内となります。
「自社に所属している従業員だけに配慮すれば良いだろう」と認識では、安全配慮義務に対応しているとは言えませんので注意が必要です。
また、海外で勤務する従業員も安全配慮義務の範囲内となるため、赴任先へ出国・帰国する場合に、従業員が安全を確保できるよう支援する必要があります。
職場環境配慮義務の法的根拠
前述のように、職場環境配慮義務のベースとなる安全配慮義務の法的根拠は労働契約法第5条によるものです。労働契約法第5条によれば、労働者と使用者の関係について次のように記されています。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
引用:労働契約法第五条
経営者は上記の法的根拠にのっとり、従業員が生命と身体の安全を維持した状態で働けるように配慮しなければなりません。
職場環境配慮義務で企業がやるべきこと
職場環境配慮義務にのっとって企業がやるべきことには、室内環境・作業環境の快適化や、業務にかかる負荷・働き方の見直しなどが挙げられます。
ここでは、具体的にどのような配慮が必要なのかについて解説します。
室内環境・作業環境の快適化
室内環境・作業環境の快適化は、「室温・温熱条件」「科学的条件」「物理的条件」の3種類にわかれます。それぞれの条件について一つひとつ配慮することが、快適な労働環境の醸成につながります。
室温・温熱条件
室温・温熱条件とは、従業員が働くオフィスの室温や湿度などに配慮し、快適に維持するための条件のことです。会社は従業員が快適に働けるように空調設備を導入し、室内温度や湿度などに注意を払わなければなりません。
また屋外で働く必要がある従業員がいる場合は、熱中症対策や、冷えや寒さからも守るための工夫を施すことも大切です。ほかにも、雨天などの悪天候時に配慮する取り組みも室温・温熱条件の範囲内に含まれます。
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科学的条件
科学的条件とは、従業員が有毒物質やガスなどに曝露されないための条件のことです。アスベストやダイオキシンなどの有毒物質・ガスなどがある環境で働かせないよう徹底し、安全に配慮された執務環境を維持しなければなりません。
そのほかに直接的に命を脅かさないものではありますが、従業員の喫煙への配慮も求められます。非喫煙者の従業員にとっては、喫煙時に発生する煙やにおいも不快感の原因になる可能性があるためです。
物理的条件
物理的条件とは、照明や採光など、物理面で従業員に影響を与える設備への配慮のことです。「働く上で適切な照度が保たれているか」「十分な採光が確保されているか」「業務を遂行する上で必要十分な設備が設けられているか」などが物理的条件に含まれます。
加えて、オフィス内の壁やデスク、会議室などの内装やレイアウトが、従業員の心理面に与える効果を十分に考慮したものになっているかどうかも物理的条件の重要な要素のひとつです。照明や採光、内装やレイアウトが総合的に働きやすい条件を備えているかどうかが問われます。
業務の負荷や働き方を見直す
室内環境や作業環境の快適化以外に、業務の負荷や働き方の見直しも重要です。従業員一人ひとりに割り当てられている業務負荷は適切かどうか、無理な働き方をさせていないかなどをチェックし、適切な水準を維持することが大切です。
長時間残業や休日出勤は、従業員の心身の負担を増加させ、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。業務負荷が重すぎると判断される場合は、早急な見直しが必要です。
また、休憩時間は適切に取れているかなどもチェックしましょう。繁忙期に特定の労働者へ過度に仕事が集中しないよう業務の分担を見直すなど、社内の連携を整えることも重要です。
ほかにも、育児や介護と並行して働く従業員のための時短勤務やリモートワーク、フレックス制度などを充実させる取り組みが求められるケースもあります。
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職場環境配慮義務違反で罰則の可能性も
職場環境配慮義務に違反すると、場合によっては罰則の対象となる可能性もあるため注意が必要です。ここでは、どのようなケースにおいて罰則を受ける可能性があるのかについて解説します。
さまざまなハラスメント
まず、罰則の有無にかかわらず、いじめなどさまざまなハラスメントが起こらないような環境づくりの徹底や、従業員の意識向上はとても重要です。しかし同時に、ハラスメントが起きた場合は罰則の対象となる可能性があることも意識しておく必要があります。
また、近年ではパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、モラルハラスメントなどに対して社会の目が一層厳しくなり、十分な配慮を行わなければ職場環境配慮義務を怠った会社だと見なされ、企業のイメージダウンにつながることは十分に考えられます。
ハラスメントは、具体的には強要罪や名誉棄損罪、侮辱罪などに該当する可能性があり、場合によっては法定刑による懲役や禁固、罰金刑などが科せられるおそれがあります。また会社には職場環境配慮義務を怠ったとして、民法による使用者責任を問われる恐れもあるため注意が必要です。
罰則にならなくても改善が必要な理由
罰則にならないからといって職場環境に配慮せず改善を怠ると、精神的苦痛や負担の増加から従業員が離職する可能性があります。それだけでなく、「ハラスメントが横行する企業」とみなされて社会的な評価が著しく低下するリスクも考えられます。
そのような事態になれば優秀な人材を確保できなくなり、社会的な信用も低下することで結果として企業の成長性が失われることにもつながります。
優秀な従業員の確保や社会的信用維持のためにも、たとえ罰則にならなくても職場環境配慮義務に従って改善を心がけましょう。
まとめ
職場環境配慮義務は、労働契約法第5条にのっとって適用されているものです。違反すると民法などに基づく罰則の対象となる可能性もあるため、日ごろから十分に配慮して快適な職場環境を整えることが大切です。
職場環境配慮義務を守るための企業の取り組みには、室内環境・作業環境の快適化や業務負荷軽減などさまざまな要素があります。一つひとつの要素への理解を深め、自社の快適な環境維持に努めましょう。
とは言え、職場環境配慮義務で求められる対応は、快適な労働環境を作るにあたり最低限やっておくべき内容であるとも考えられます。現在は働き方の多様化に伴い、執務・労働環境においても更なる付加価値を求められる傾向があり、従業員がここで働きたいと思えるオフィスづくりが採用力や従業員エンゲージメントの向上に影響を与えると考えられています。
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