食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう

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2022年07月07日 配信
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食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう

食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう
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「食品ロスの削減の推進に関する法律」(以下、食品ロス削減推進法)が、2019年10月から施行されました。それにより、食品ロス削減を通じてSDGsに取り組もうという機運が高まっています。 従来は、「食品ロス」「フードロス」は主に家庭や飲食店における問題だと捉えられてきました。しかし、近年では小売業者の慣例である「3分の1ルール」や賞味期限切れで処分される企業の防災備蓄品についても、食品ロス削減の観点から厳しい目が向けられつつあります。 そこで今回は、食品ロス問題に対する意識の向上とSDGsとの関わりや、食品ロスが生まれる背景、食品ロス解消に向けての取り組みについてご紹介します。

食品ロスの現状と原因

食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう

近年では、食品ロスが世界的な問題となっています。なぜこれほどまでに食品ロスが問題視されるようになったのでしょうか。ここでは、食品ロスの現状と原因について解説します。

食品ロスの現状

食品ロスとは、まだ食べることができるにも関わらず食べ残しや売れ残りなどの理由で廃棄される食品のことを言います。

世界の食品ロスの現状

日本だけでなく、世界においても食品ロスは深刻化しています。特に先進国では顕著で、食品の過剰生産により賞味期限までに消費しきれず、大量の食品ロスが発生している状況です。まだ食べられる状態でありながら廃棄された食料は、人口に換算するとおよそ2億人分に相当するとも言われています。
また、2020年からの新型コロナウイルスの影響によって飲食店の休業や多くのイベントが中止になり、もともと使用予定だった食材が使用されないまま賞味期限を迎え廃棄される事例が増えたことから、世界の食品ロスにさらに拍車がかかったのだとされています。

日本の食品ロスの現状

平成29年度の総務省人口推計および食料需給表によれば、日本の食品ロスは612万トンにものぼります。なかでも飲食店などの事業系食品ロスが328万トンあり、家庭用食品ロスの284万よりもやや多い状況です。
これは日本人1人につき1日1杯のお茶碗に相当するご飯を捨てている計算になり、日本においても大量の食品ロスが生じていることが見て取れます。

食品ロスを生む3分の1ルール

食品ロスが生まれる背景には、消費者の賞味期限に対する過敏とも言える意識が強く影響しています。その意識に応えるようにして登場したのが、日本の食品業界で慣例となっている「3分の1ルール」です。

これは、食品の流通過程において食品メーカー・卸業者・小売業者の間で、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ均等に分け合うという考え方に基づいたルールです。多くの卸業者はこの慣例にのっとって賞味期間の3分の1以内の期間に小売業者に納品をしています。たとえば賞味期間が3カ月の商品であれば、その3分の1である1カ月を超える前に小売業者に納品をするものです。

この3分の1の期間を超え納品が遅れた商品は、賞味期限までかなりの日数があるにも関わらずメーカーに返品・廃棄されることになります。日本においては特に、このルールが多くの食品ロスを生んでいるのです。

「食品ロス」はSDGsのどの目標に当てはまる?

食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう

SDGsには「17の目標」が掲げられていますが、食品ロスはどの目標に当てはまるのでしょうか。ここでは基本的なSDGsの考え方と、17の目標における食品ロスの扱いについて解説します。

そもそもSDGsとは?

SDGsとは、17のゴールと169の達成基準からなる「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかで、各国が目指すべき目標として掲げられました。
簡潔に言うと、2030年までに世界中で人が人らしく豊かに暮らしていける社会的基盤をつくるために達成すべき目標がSDGsなのです。
地球環境と安定した社会を守ることは、企業にとっては事業の将来や存続を守ることにもつながります。さらに、社会的な評価や信頼度においても大きく関わってくるとして、昨今はSDGsに積極的に取り組む企業が増えています。

目標12「つくる責任 つかう責任」

「つくる責任 つかう責任」では、持続可能な消費と生産のパターンを構築する目標が示されています。
なかでも「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」という項目で、食品ロスに対する具体的な目標が定められています。

目標2「飢餓をゼロに」

「飢餓をゼロに」では、食料の安定確保と栄養状態の改善をはかって世界の飢餓を無くすためにも、持続可能な農業による食糧生産を推進する目標が掲げられています。
食料を安定確保するためには、世界の食品ロスを削減すると共に、食料を必要としている場所に適切に分配する仕組みづくりも重要です。

目標13「気候変動に具体的な対策を」

「気候変動に具体的な対策を」では、農業や水産業、飲み水の確保などの問題にも大きく影響を及ぼす、地球温暖化をはじめとする気候変動に対する内容が盛り込まれています。
食品ロスは、その廃棄時や廃棄場所への運搬時に大量の二酸化炭素を排出します。この二酸化炭素などの温室効果ガスが地球の気温を上昇させ、さまざまな自然災害や生態系への影響を起こすことから、食品ロス問題は、気候変動にも深くかかわっているのです。

目標14「海の豊かさを守ろう」

「海の豊かさを守ろう」では、海洋と海洋資源を保全して、持続可能な形で利用する目標が掲げられています。必要以上に海洋資源を乱獲することは、 最終的に食品ロスを発生させることにもつながりかねず、また海洋資源を取り尽くしてしまうリスクがあります。

食品ロス削減からSDGsに取り組む方法

食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう

貯蔵やインフラなどの問題でやむなく廃棄されるものとは異なり、「本来食べられるのに捨てられてしまう」食品ロスは事業者や消費者の意識が変わればすぐにでも削減できます。
家庭や食品業界はもちろん、災害対策用に大量の防災備蓄品を抱えている企業・施設・地方公共団体なども食品ロス削減のためにできることを積極的に行っていくことが大切です。そこで、食品ロス削減の観点からSDGsに取り組む方法を、個人・企業・飲食店・食品業界・行政など複数の視点で紹介します。

個人でできる食品ロス削減

家庭で出る食品ロスで多いのが、食べ残しと手つかず食品です。安いからという理由で買ってはみたものの使いきれずに持て余した経験や、贈答品でもらったものを放置してしまったりという経験は誰しもあるのではないでしょうか。

個人が食品ロス削減に取り組むには、まずは食品ロス問題を意識して心がけるということが重要です。食べられる分だけ購入する、つくりすぎない、保存方法や調理方法を工夫する、消費できそうにない贈答品は周囲にお裾分けをするなど、簡単にできることがたくさんあります。
また、すぐに使う予定の食材は賞味期限までの長さにこだわらずに購入する、外食時に食べきれない量をオーダーしない、食べ残してしまったものはお店と相談の上で「持ち帰り」を検討するといった消費者としての冷静な行動は、日本全体の食品ロス削減にとって有効です。

企業ができる食品ロス削減

食品業界とは関係のない企業であっても、防災備蓄品の管理などで食品ロス削減に取り組むことができます。防災備蓄用の食品や飲料水の賞味期限などを正しく把握して管理することは、食品ロス削減という観点からだけでなく、いざというときに従業員の命を守るためにとても大切です。
ただし「何をどれだけ備蓄するのかを決めて購入し、在庫を正しく管理し、食品や飲料水の賞味期限を把握した上で、賞味期限が近いものを廃棄せずに有効活用する」という管理は手間がかかります。また、そこまで社内のリソースをさけないという企業も少なくないでしょう。
パソナ日本総務部では、こうした防災備蓄品管理の一連の流れをすべてお引き受けする「防災備蓄品ワンストップサービス」を行っています。
ご要望に沿ったきめ細やかなサービスが特長で、「アレルギー対応食やハラール認証の非常食がほしい」「外勤の従業員用に車載セットをつくってほしい」といったカスタマイズ相談も可能です。
また、買い替えに伴って処分せざるを得ない賞味期限の近い食品などを、原則無料で引き取るところまでをワンストップでお引き受けしているため、SDGsや食品ロス削減の観点においても有効なサービスです(無料引き取りには条件があります)。

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飲食店でできる食品ロス削減

飲食店においては、仕入れ過ぎない、野菜の皮を厚く剥いてしまうなど食べられる部分まで捨ててしまう過剰除去をしない、つくりすぎないことが大切ですが、いちばんの食品ロス削減は「お客様に食べきっていただくこと」です。
お客様に食べきっていただくため、小盛りをつくる、選択メニューを準備する、過剰な食べ残しには別途料金が発生する可能性があることをメニューに記載するなどの工夫があげられます。

食品業界でできる食品ロス削減

ここでは、食品業界における食品ロス削減についてご紹介します。

「3分の1ルール」からの脱却

食品業界では、「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」の設立を支援するなど農林水産省が中心となって、「3分の1ルール」から脱却すべく納品期限の緩和を推進しています。

すでに飲料や賞味期間180日以上の菓子については、多くのスーパー・ドラッグストア・コンビニエンスストアにおいて納品期限の緩和が実施されています。まだ対象メーカーを絞るなどしている小売業者も少なくありませんが、徐々に「3分の1ルール」に代わって「2分の1ルール」が拡大しつつあるようです。
購入から消費までのサイクルが短いカップ麺についても納品期限緩和が推奨されており、大手コンビニエンスストアなどではすでに実施されています。

賞味期限の表示変更

同時に、賞味期限の表示についても変革が起きています。 大手メーカーなどで、賞味期限が長い加工食品において「年月日」表示から、日付を省く「年月」表示に切り替える動きが広まっています。

これまで、在庫の余っている拠点から在庫不足の拠点へと商品を転送する場合、しばしば「日付逆転のため転送できない」という事態が起きていました。これは小売業者の慣例により、すでに納品されている商品より1日でも賞味期限が古いものを新たに納品できないからです。
賞味期限を年月日表示から年月表示にすることで、数日の賞味期限の差に左右されず柔軟な在庫商品の転送ができます。

食品リサイクル法の推進

農林水産省は食品業界において「納品期限の緩和」「賞味期限の年月表示」「賞味期限の延長」を三位一体で推進していくことで、食品ロスの削減を目指しています。
これにあわせて進めているのが、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(略称:食品リサイクル法)」などを通じた食品リサイクルによる食品ロス削減です。食品関連事業者による売れ残り・食べ残し・製造過程で発生する食品廃棄物の発生抑制と、飼料や肥料の原材料としての再生利用などを促進することをうたっています。

また製造過程で出てしまう規格外品や余剰在庫は、福祉施設などへ食材・食品を無償提供する「フードバンク」に提供するという方法も食品ロス削減に有効です。農林水産省は、フードバンク活動についても支援をしています。

国や地方公共団体ができる食品ロス削減

食品ロス削減推進法で示されている通り、国や地方公共団体には食品ロス削減が進むように施策の策定・実行の責務があります。その上で自らも食品ロスを出さないよう、防災備蓄品や学校給食にともなう食品廃棄物などを適正に管理していく必要があります。

たとえば、東京都では、2017年に賞味期限間近の防災備蓄品であるクラッカー約10万食の配布を行いました。これは単純な廃棄を回避するだけでなく、防防災備蓄の必要性や食べ物の大切さ、食品ロスについて考えるきっかけを与えるためでもあります。

しかし、総務省東北管区行政評価局が東北6県にある国の行政機関などを対象に、平成27年度から29年度までに更新をした災害備蓄用の食料または飲料水について調査したところ、42%の機関が全廃棄をしていたことが判明しました。
食品ロス削減に対する認識の浸透と適正な管理・活用が行われるよう、さらに取り組みを推進していく必要があると言えます。

まとめ

食品ロスの現状と解決策は?食品ロスの削減でSDGsに取り組もう

莫大な量の「まだ食べられる食品」を廃棄処分にしてしまう食品ロスは、個人・企業・食品業界・地方公共団体・国が一丸となって取り組まなくてはならない重大な課題です。
食品ロスを解消することで食品を無駄にしなくてすむようになるだけでなく、家計にかかる食費や地方公共団体や国が廃棄にかける費用も節約できます。
食品ロス削減やSDGsに積極的に取り組むことは、企業の社会的責任でもあります。一人ひとりが意識を高めて、食品ロスの削減に取り組んでいきましょう。

なお、株式会社パソナ日本総務部が提供している「企業法人向け 防災備蓄品ワンストップサービス」は、食品ロス削減の観点からも防災備蓄品の適切な管理が可能です。「防災備蓄品の賞味期限管理ができていない」「期限切れの近い不要な備蓄品が発生しそうだ」とお悩みの場合は、ぜひこの機会にサービスの利用をご検討ください。

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