WELL認証とは?オフィスで取り組むメリット
WELL認証とは?オフィスで取り組むメリット
会社やオフィス空間へのイメージは、時代の変化と共に変わりつつあります。従来は仕事に取り組むための最低限の設備が備わっていれば十分である、といった認識が一般的でしたが、近年ではオフィス環境の快適さやデザイン性なども重要になっています。 そんな中、雰囲気の向上や環境改善を目的として、オフィスにBGMを流す企業も増加しています。今回はオフィスにおけるBGMの効果や具体的な導入方法、オフィス環境改善のポイントなどについてご紹介します。
WELL認証とは?
WELL認証とは、アメリカで2014年に発表された空間評価システムです。公益企業であるIWBI(International WELL Building Institute)から、2014年10月20日にv1が公開されました。2018年5月末には、WELL v2パイロット版がリリースされています。
空間のデザイン・構築・運用に「健康」という評価軸を加え、心身共により快適な空間の創造を目指すことを目的としています。そのため、従来の空間評価システムに比べて建物内で過ごす人々の、心身の健康や快適さに重きを置いています。 WELL認証における健康や快適性といった指標は、「ウェルビーイング」という概念を基準として設計されています。
ウェルビーイングとは
WELL認証における評価軸の基準である「ウェルビーイング」とは、「幸福」「健康」といった意味をあらわす言葉です。1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章の前文で、ウェルビーイングは「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」と定義されています。
この定義の由来から、従来ウェルビーイングという言葉は主に社会福祉の分野で用いられる専門用語でしたが、現在では企業内の就業環境や組織の在り方について議論される時にも用いられています。
健康経営の観点から、ウェルビーイングへの認知が高まる中、WELL認証への注目も高まりつつあります。
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WELL認証が世界で普及している背景
2014年に公開されたWELL認証は、早くも世界中のオフィスで普及しつつあります。その背景として、「慢性的な人材不足」や「働く価値観の多様化」があると考えられています。
近年、日本を含む先進国において、若年人口の減少による慢性的な人材不足が、企業と社会全体の課題となっています。これに対して、企業の求人ニーズは年々増加傾向にあります。 人材不足と求人ニーズが反比例する中、従来のような高額な報酬を提示するだけの募集では人材が集まりにくくなっています。そこで他社との差別化を図る意味合いでも、従業員の心身への健康を重視した取組みが重要視される傾向にあります。
また、価値観の多様化が進む現代社会においては、従来のような自己犠牲的な働き方は従業員から敬遠される傾向にあります。そのため、求職者はより自分らしさを尊重して働ける企業を求める傾向にあり、ワークライフバランスに重きを置いた求人に人気が集まっています。
以上の点から、「健康」という視点に重きを置くWELL認証が、世界で普及しはじめているのです。
WELL認証の審査基準や認証プロセスについて
ここでは、WELL認証の具体的な審査基準や認証プロセスについてご紹介します。WELL認証の取得により、健康への意識の高さや具体的な取り組みを社内外にアピールできるメリットがありますが、国内企業でのWELL認証取得はまだ進んでいない状況です。下記を参考に、ぜひ先行して認証取得を目指してはいかがでしょうか。
WELL認証の審査基準
WELL認証の審査基準として、健康と幸福に関連する7つのコンセプトが公開されています。
それぞれに細かな評価項目があり、合計100以上にのぼる要素の組み合わせで配点が決定されます。
空気
空間における空気を評価する項目です。全29項目あり、特に空気の質や禁煙、換気性、清掃手順、汚染管理など13項目が必須とされています。
水
8項目で構成され、そのうち基本的な水質や、無機汚染物質、有機汚染物質、農薬汚染物質、上水添加物の有無が必須項目とされています。
食物
空間において提供される、食物の栄養価や安全性などを評価する項目です。
全15項目あり、果物と野菜、加工食品、食物アレルギー、手洗い、食品の汚染、人工的原材料、栄養成分表示、食品広告が必須となっています。
光
空間における照明や自然光についての評価項目です。
12項目のうち、ビジュアル照明デザイン、サーカディアン照明デザイン、人工光のグレア制御、太陽光グレア制御の4点が必須とされています。
フィットネス
空間内における運動についての取り組みを評価する項目で8項目あり、特に屋内のフィットネスとしての動線、活動へのインセンティブプログラムという2項目が必須とされています。
快適性
アクセシブルデザイン、エルゴノミクス、外部騒音の侵入、内部発生騒音、温熱快適性といった5つの必須要素を含む12項目で構成されています。
空間における人々の過ごしやすさを評価するカテゴリです。
こころ
健康とウェルネス意識、インテグレイティブデザイン、入居後調査、美しさとデザイン、バイオフィリアといった5つの必須項目を含む17項目で構成されているカテゴリです。
その他、家庭のサポートやストレスへの対象といった項目も含まれています。
WELL認証の認証プロセス
WELL認証は上記の7つのコンセプトをもとに、プラチナ・ゴールド・シルバーの3段階で評価されます。必須項目をすべて満たすことで「シルバー」の認証が取得でき、さらに加点項目の40%以上を達成すると「ゴールド」に、80%以上を達成すると「プラチナ」の認証が取得できます。またWELL認証を受けるには、更に以下のプロセスを経ることが必要です。
STEP1:WELLプロジェクトへの登録とコーチング
WELL認証を得るには、まず International WELL Building Instituteより登録する必要があります。 登録後、担当者よりコーチングを受講し、各項目の合格方法や技術的な質問への回答などを受けます。
STEP2:書類の作成と提出
登録とコーチングの完了後、WELL認証の必須項目と加点項目を満たしている旨を証明する書類を作成し、提出します。合格後は実地調査のスケジュール調整をおこないます。
なお、書類の審査には20〜25営業日ほどかかると言われており、不合格の場合はもう一度書類提出からやり直しが必要です。
STEP3:実地調査と認証
書類審査を通過すると、実際にオフィスなど評価対象となる建物をGBCI(Green Business Certification Inc.)の職員が実地調査します。なお、GBCIとは、WELL認証の認証業務を行なっているNGO団体です。
実地調査の結果は40〜45日営業日以内に通知され、合格後意思確認を経てようやくWELL認証が承認されます。
以上のように、WELL認証の取得には多くの時間と労力が必要です。そのため、日本ではまだ取得が広まっていないのが現状であり、2019年6月現在、登録企業は19社に留まり、うち認証を得た企業はわずか2社となっています。
認証を得るためのハードルは高いですが、その取り組みは企業姿勢のアピールや、人材採用時などに大きな武器となる、価値の高い評価システムと言えるでしょう。
WELL認証取得のためにすべき取り組みは?
WELL認証を取得するには、数多い評価項目の達成がハードルとなります。ここでは、オフィスにおいてWELL認証取得のために、どのような取り組みを行うべきかについてご紹介します。
「健康経営」をキーワードにオフィスの在り方を考える
「健康経営」とは従業員の健康管理について、経営的な視点で考え戦略的に実践することを指し、従業員の健康増進による生産性・モチベーション向上を目指す経営戦略のひとつです。近年では経済産業省が「健康経営銘柄」として健康経営に取り組む企業を評価するなど、その注目度は高まっています。
健康経営の考え方とWELL認証の基準には共通点があるため、企業として健康経営を目指すためにも、WELL認証の取得も視野に入れた就業環境の整備を意識することをおすすめします。
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従業員の健康増進を目的としたサービスを導入する
日本における数少ないWELL認証の取得企業は、特にオフィス内の環境整備に注力していることが特徴です。
具体的にはリラックスできる設備を備える、オフィス内を緑化する、といった工夫が挙げられます。とはいえ予算や工数などの問題から、取り組みが難しい場合も多いと想定されます。
そこでおすすめしたいのが、空間デザインのプロフェッショナルにオフィス内の環境改善を依頼するという方法です。
サービスの例として、パソナ日本総務部のオフィス緑化サービス「 COMORE BIZ(コモレビズ)」があります。
COMORE BIZ(コモレビズ)は、WELL認証の7つのコンセプト「こころ」の必須項目である、バイオフィリア(自然への愛)の考えに基づいたデザインと、ストレスを軽減させる科学的エビデンスによるレイアウト設計が両立した、従業員の心身の健康を増進させるオフィス緑化サービスです。 WELL認証の取得やオフィス環境の改善に興味がある場合には、ぜひ導入を検討されてみてはいかがでしょうか。