従業員のウェルビーイングはなぜ必要?メリットや職場への取り入れ方を紹介
従業員のウェルビーイングはなぜ必要?メリットや職場への取り入れ方を紹介

働き方改革が進む中、いま注目を集めている概念のひとつである「ウェルビーイング」という言葉をご存じでしょうか。「ウェルビーイング」は、労働者の健康やワークライフバランスを整えるために重要な要素である、という認識が広まりつつあります。また、海外では企業がより良い組織運営を行うために、ウェルビーイングが必要不可欠な要素であると認知されているようです。今回はウェルビーイングの定義や意味について解説し、日本企業で効果的にウェルビーイングを取り入れるための方法についてご説明します。
そもそも「ウェルビーイング」とは?
ウェルビーイング(Well-being)という言葉を直訳すると、「幸福」「健康」という意味になります。
1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章 の前文で「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。」と定義されています。ウェルビーイングも、同様の意味合いで用いることが多い言葉です。
もともとウェルビーイングは、社会福祉の分野で利用される専門用語でしたが、近年ではビジネスの場でも使われるようになりました。
特に働き方改革が社会全体で進む現在、企業内の就業環境や組織の在り方について議論する際に「ウェルビーイング」という概念を意識することも多くなっています。
国別の幸福度ランキングが示す、日本のウェルビーイングの現状

国際連合が2025年に発表した「世界幸福度報告書」の統計データをもとに、日本のウェルビーイングの現状をご紹介します。
2025年版の「世界幸福度報告書」によると、国民幸福度が最も高かった国はフィンランドで、8年連続で1位となっています。次いでデンマーク、アイスランド、スウェーデンと続き、北欧諸国が上位を占める結果となっています。
一方で、日本は2024年の51位から順位を落とし、55位という結果です。
経済的な不安だけでなく、社会とのつながりや他人への寛容さ、人生選択の自由度といった視点も含め、日本では「ウェルビーイング」という言葉は浸透していても、その実践はまだまだこれからと言えます。
参照:World Happiness Report 2025|WHR
ビジネスの場でウェルビーイングが重視されるようになった背景

ビジネスの場にウェルビーイングの考え方が必要とされている背景には、主に以下の3つが挙げられます。
SDGsとの関連性
SDGsとは、国連総会で採択された「人類がこの地球で暮らし続けていくために2030年までに達成すべき具体的な目標」のことです。国際目標として世界的に推進されており、企業でも取り組むことが求められています。
SDGsには全部で17の目標があり、そのうちのひとつが「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」です。“だれひとり取り残されない世界の実現”というSDGsの目的を踏まえると、ここでいうウェルビーイングは福祉に留まらず、経済・環境・教育など多面的な意味を持つと考えられます。この点から、ウェルビーイングの実現に向けて取り組むことは、SDGsの達成に貢献すると言えます。
また、ウェルビーイングはSDGsの次なる国際目標である「ポストSDGs」において、重要なキーワードのひとつとなっています。
人々の幸福や福祉といった社会的・平和的な意味合いを含め、より踏み込んだウェルビーイングの実現が求められていると言えるでしょう。
重視すべきステークホルダーの変化
ステークホルダーとは、企業経営やプロジェクトの遂行において、直接的または間接的に影響を受ける利害関係者のことです。主に従業員や取引先、顧客、株主、投資家、地域社会などが該当します。
ステークホルダーと信頼関係を築くことは企業にとって重要な活動のひとつであり、近年は中でも従業員を重視する動きが高まっています。
なぜなら、日本をはじめとした先進諸国では少子高齢化が進み、労働人口の減少による労働力不足が重大な問題となっているからです。この採用難の時代に人材を獲得し長く定着してもらうためには、従業員が心身ともに健康でモチベーション高く働ける環境の構築が不可欠です。そのため、ビジネスの場においてウェルビーイングが重視されるようになったと考えられます。
また、2023年から上場企業4,000社に対して「人的資本情報開示」が義務付けられました。該当企業は、人材育成や従業員エンゲージメント、健康・安全など、人的資本に関する情報をステークホルダーに開示する必要があります。
ウェルビーイングの実践に取り組むことは、従業員が心身ともに健やかに働いていると証明できるため、人的資本情報開示を通してステークホルダーからの信頼性向上が期待できます。この点も、ウェルビーイングが重視されている背景のひとつと言えるでしょう。
働き方の多様化の継続的な推進
新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、働き方の多様化が加速しました。とくにリモートワークの普及が目立ちましたが、従業員のワークライフバランスを充実させた一方で、従業員同士のコミュニケーション不足やアイデア共創の減少など、さまざまな課題も表面化しました。
これに対し、出社の場合は業務に適した環境が整っているうえに、偶発的なコミュニケーションが生まれる可能性が高いと言えます。しかし、従業員が通勤や人間関係にストレスを感じたり、電話対応や荷物の受け取りなどの雑務に時間を取られ煩わしさを感じたりすることもあるでしょう。
今後も働き方の多様化は継続すると予測でき、リモートワークと出社、それぞれの労働環境に目を向ける必要が出てきます。
従業員がどちらの働き方を選択しても、やりがいと働きやすさを感じ最大限のパフォーマンスを発揮できるようにするには、ウェルビーイングな環境づくりに力を入れることが重要です。
ウェルビーイングの実践メリットは?

それでは、企業がウェルビーイングの考え方を経営に取り入れると、どのようなメリットを得られるのでしょうか。 ここでは、ウェルビーイングがもたらす5つのメリットについてご紹介します。
健康経営の推進
ウェルビーイングを意識した取り組みは、従業員の健康を経営課題のひとつと捉える「健康経営」にも直結します。
従業員が健康な状態で日々の労働に従事できる環境を整えることは、企業全体の活力向上につながると言えるでしょう。
良好な人間関係の構築
ウェルビーイングに向けた実践は、従業員同士のコミュニケーション活性化にも寄与します。多様な価値観を認め合い、理解を深めることで信頼が生まれ、人間関係が良好になると考えられます。ひいては、女性の生理休暇や男性の育児休暇への理解も得やすくなるでしょう。
離職率の低下
ウェルビーイングを重視した経営によって従業員の多様な働き方やワークライフバランスが実現し、離職率の低下を達成しやすくなると考えられます。
妊娠や出産、介護によってワークライフバランスを保つのが困難なことから、やむを得ず離職するケースも珍しくありません。従業員のウェルビーイングを重視する取り組みは、従業員の心理的安全性を保つ環境づくりにもつながるため、離職を防ぎやすくなります。
生産性の向上
ウェルビーイングな環境で業務を行うことで心身が安定し、従業員一人ひとりが仕事にやりがいを感じ、意欲をもって仕事に取り組めるようになると考えられます。
結果的に組織全体の生産性が向上するという効果が期待できるでしょう。
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企業価値やブランドイメージの向上
企業の価値やイメージに直結する項目というと、これまでは収益がメインでしたが、近年は社会貢献や労働環境整備なども重視されるようになりました。
この背景から、ウェルビーイングを重視する経営を実践した場合、取引先や顧客が前向きなイメージを持つようになり、企業の価値やブランド力が向上すると考えられます。新規契約を獲得しやすくなったり、優秀な人材を確保しやすくなったりする効果が期待できるでしょう。
オフィスへのウェルビーイングの取り入れ方

では、実際に企業がウェルビーイングを実施する場合、どのような方法があるのでしょうか。以下で代表的な取り入れ方をご紹介します。
健康増進を目的とした取組みを行う
従業員の身体的・精神的な健康を増進するため、健康診断や予防接種、ストレスチェック、産業医との面談などを実施しましょう。能動的に従業員の健康状態を確認すると同時に、メンタルヘルスのサポート体制を整えることで、ウェルビーイングを実現しやすくなります。
このほか、健康に関する情報専用ポータルを整備したり、健康管理アプリを全社的に導入したりするのも効果的です。
労働環境を改善する
残業や休日出勤が蔓延しないよう、時短勤務やフレックスタイム制を導入したり、一部業務を外部委託したりしましょう。また、休暇を取りやすい環境づくりに努めることも重要です。
従業員一人ひとりに合わせた労働環境を構築することで従業員がいきいきと働けるようになるため、ウェルビーイングを実現しやすくなります。
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企業理念や展望を共有する
従業員の心身と企業経営がともに良い状態になるには、従業員が企業の理念や展望を理解し、納得したうえで業務を遂行することが欠かせません。
そのため、従業員に対して企業理念や展望を共有することが重要です。ともに同じ方向を目指せる体制が整えば、従業員エンゲージメントが向上し、結果的にウェルビーイングな状態に近づきます。
オフィス環境を改善する
気軽に雑談できる交流スペースを設けたり、フリーアドレス制を導入したりと、従業員にとって働きやすいオフィス環境へ改善するのも良いでしょう。コミュニケーションが活性化するほか、ストレスなく業務に取り組めるようになるため、ウェルビーイングを実現しやすくなります。
オフィス環境を改善するなら「バイオフィリックデザイン」がおすすめ!その効果とは

バイオフィリックデザインとは、自然と触れ合うと人間が本能的にやすらげる「バイオフィリア理論」に基づき、人の健康と幸福を向上させる空間デザインの手法です。バイオフィリックデザインの導入効果については、ロバートソン・クーパー社の研究結果が広く知られています。研究結果によると、オフィスにいながら植物や自然光など自然を感じられる要素が身近にある環境は、そうでない環境に比べて、幸福度が15%、生産性が6%、創造性が15%高くなるとされています。これにより、職場におけるバイオフィリックデザインは従業員のストレスを軽減し、ウェルビーイングに大きな影響を与えることが示されています。
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ウェルビーイングなバイオフィリックデザインオフィスの事例
ウェルビーイングの実施のため、オフィスにバイオフィリックデザインを導入している企業は多くあります。
ポラスグループ 第一エネルギー設備株式会社/ リフレッシュルーム
ポラスグループ 第一エネルギー設備株式会社は、ウェルビーイングを向上させる職場環境をつくるために、新たにリフレッシュルームを設置し、バイオフィリックデザインを導入しました。
植物が自然に溶け込む、さまざまな用途で使いやすい空間づくりにこだわったことで、従業員からは高い満足度の声が上がり、特にソロブースは争奪戦になるほど人気になったそうです。また、従業員同士の交流が活発化し、生産性や創造性が向上しました。
株式会社エム・シー・ファシリティーズ/ 執務エリア
株式会社エム・シー・ファシリティーズは、ウェルビーイングをテーマに執務エリアをリニューアルするため、バイオフィリックデザインを導入しました。
インパクトのある空間になるよう植物を配置し、ハイレゾ自然音やアロマなど自然の要素をフルパッケージで採用。導入したエリアには従業員が集まるようになりました。また、「植物に癒される」「自然音があることで集中できる・気分転換になる」といったポジティブな声も寄せられているそうです。
大和ハウス工業株式会社/コトクリエ内Biophilic STUDIO(研修室)
大和ハウス工業株式会社は、大和ハウスグループの社員研修や、多種多様な人々と価値を共創し学びを育む場として「コトクリエ」を竣工しました。ウェルビーイングの実現にはバイオフィリックデザインが不可欠と考え、Biophilic STUDIOに導入したそうです。
リラックスすることで集中できる環境づくりを重視し、10種類以上の植物を選定して最適な緑視率で配置。国際的な環境認証である「LEED」「WELL」「SITES」を日本で初めて同時取得しました。
バイオフィリックデザインソリューション「COMORE BIZ(コモレビズ)」のすすめ
前項の事例でご紹介した企業は、パソナ日本総務部の「COMORE BIZ(コモレビズ)」を導入しています。
「COMORE BIZ(コモレビズ)」は、さまざまな実証実験による科学的エビデンスに基づいて、植物や自然音を融合させた空間づくりを行うことが最大の特長です。ただ職場の見栄えを良くするだけでなく、ストレスや疲労感の軽減、モチベーションや集中力の向上といった効果を促し、ワーカーと企業のウェルビーイングに寄与するワークプレースをご提案しています。
さらに、ビルやオフィスなどの空間を「人の健康とウェルビーイング」に焦点を当てて評価するWELL認証取得のコンサルティング・健康経営の実践サポートといったサービスもご紹介しています。
企業が自社のウェルビーイング向上を検討する際には、要望のヒアリングからデザイン計画・施工・メンテナンスまでをワンストップで行う「COMORE BIZ(コモレビズ)」の利用をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ

ウェルビーイングは、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを意味する、世界的に注目されている概念です。従業員の心身の健康を保つため、そして良好な企業経営を実現するうえで欠かせない考え方と言えます。
ウェルビーイングを実現する方法はさまざまですが、なかでもオフィス環境の改善に着手する場合は、バイオフィリックデザインを取り入れるのがおすすめです。空間に自然の要素を取り入れることで、従業員の幸福度・生産性・創造性が向上すると言われています。
パソナ日本総務部の「COMORE BIZ(コモレビズ)」は、そんなバイオフィリックデザインを活用してオフィスの構築をサポートするサービスです。
ぜひ、オフィスにウェルビーイングの考えを取り入れて、従業員のパフォーマンスや幸福度向上に取り組んでみてはいかがでしょうか?