疲労回復から人材成長まで─バイオフィリックデザインオフィスがもたらす効果とは?

働き方の多様化が進む今、オフィスに求められる役割は大きく変わりつつあります。単なる業務の場ではなく、人のパフォーマンスや成長を引き出す「環境」として、その価値が見直されています。
近年注目されている「バイオフィリックデザイン」は、自然の要素を取り入れることで、疲労回復や集中力の向上、創造性の発揮、さらにはコミュニケーションの活性化など、さまざまな側面に影響を与えるとされています。このコラムでは、心理学的な視点や研究知見をもとに、バイオフィリックデザインオフィスがもたらす具体的な効果と、その可能性について解説します。
なぜ今、オフィスの価値が問われているのか
働き方の多様化とオフィス価値の変化
近年、働き方の多様化が進むなかで、「オフィスは何のために必要なのか」を改めて考える企業が増えています。単に業務をこなす場所ではなく、人がつながり、成長していく場として、その役割は見直されつつあります。
出社回帰の一方で、リモートワークやハイブリッドワークも定着しており、今後もワークスタイルの選択肢の一つとして継続すると考えられます。そのため、オフィスには「そこに集まることでしか生み出せない価値」が、これまで以上に求められるようになりました。
こうした背景から、オフィスは「作業をする場所」から、「人の創造性や関係性を引き出し、成果や新たな価値を生み出す環境」へとシフトしつつあります。
空間の価値を高めるバイオフィリックデザイン
そうした中で注目されているのが「バイオフィリックデザイン」の効果です。
人間は本能的に自然や生物を求め好む傾向があり、自然環境との関係性が心身の健康や幸福感、集中力、生産性にポジティブな影響を与えるという「バイオフィリア理論」の考え方に基づき、植物をはじめとする自然の要素を空間に取り入れることで、人の心身に良い影響をもたらそうとするデザイン手法が「バイオフィリックデザイン」です。感覚的に「心地よさ」を演出するだけでなく、心理学や行動データに基づいたエビデンスのある空間づくりができることも注目を集める一因です。
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自然がもたらす疲労回復の力
注意回復理論とは
日々の業務において、私たちは意識的な集中力を使い続けています。資料作成、会議、意思決定など、頭をフル稼働させる業務が続くと、知らず知らずのうちに疲れがたまっていきます。
心理学の分野では、こうした状態から回復するために「注意回復理論」という考え方が知られています。この理論では2つの“注意”があります。
ひとつは意識して注意を払う「意図的注意」。たとえばオフィスでの集中した作業などが当てはまり、疲労につながる注意です。もうひとつは何かにふと目を引かれて、意識せずに注意を払う「自動的注意」と呼ばれるもので、これは疲労を回復させるとされています。
注意回復理論では、「逃避」「魅了」「広がり」「適合」という要素が、自動的注意を促す回復特性として挙げられています。自然環境にはこれら4つの要素が豊富に含まれているため、高い回復効果が期待できると考えられています。
注意回復理論とオフィス環境
実際に、植物を取り入れたオフィス空間を評価した研究では、緑のある空間ほど注意回復効果が高いことが確認されています(※1)。
こうした疲労回復は、単に「休憩する」というだけでなく、その後の仕事への向き合い方を大きく変えてくれます。余裕が生まれることで、思考の柔軟性や周囲への気配りといった力が戻ってくる可能性があります。
※1:「注意回復理論に基づく室内環境のrestorativenessの測定」(相模女子大学・芝田教授ら,日本環境心理学会 2023)
創造性を引き出す「余白」のある空間
アイデアは“離れたとき”に生まれる
「創造性」もバイオフィリックデザインにより期待できる効果のひとつです。デスクの前ではなく、気分転換の散歩やシャワー中によいアイデアがひらめいた経験がある方も多いのではないでしょうか?実は、新しい発想やアイデアは、必死に考えているときよりも、少し気を抜いて、注意が課題から離れた瞬間に生まれることが少なくありません。
ワラスの4段階モデル
創造性の思考プロセスを説いた、ワラスの「4段階理論」によれば、創造的なアイデアが生まれる過程は「準備期」「あたため期」「ひらめき期」「検証期」の4つの段階に分かれています。
ひらめきにつながる「あたため期」には、問題から一度意識を離し、思考が自由に動く状態が重要だとされています。「準備期」に集めた情報を一時的に放置する間に、頭の中で潜在的・無意識に処理され続け、アイデアが再構成されると考えられているからです。
バイオフィリックデザインの空間は、自然を感じる空間に身を置くことで注意が回復し、前向きな内省や連想が生まれやすくなります。その結果、ひらめきにつながる思考を、無理なく続けやすい環境が形成されるといえるでしょう。
コミュニケーションが自然に生まれる仕組み
心理的ハードルを下げる空間設計
バイオフィリックデザインのもう一つの特徴は、人と人との関係性に良い影響を与える点です。従来型の整然としたオフィスでは、話しかけること自体に少し勇気が必要な場面もあります。
一方、植栽や自然素材を取り入れ、視線がぶつかりにくい配置にしたオフィスでは、心理的な緊張が和らぎます。実際の調査でも、こうしたオフィスでは部署を越えたインフォーマルなコミュニケーションが活性化することが示されています(※2)。
ちょっとした立ち話や相談は、業務効率だけでなく、相互理解や信頼関係の構築にもつながります。オフィス空間が、その“きっかけ”を静かに後押ししてくれると考えられます。
※2:「バイオフィリックデザインオフィスが社内のインフォーマルコミュニケーションと業務の生産性に対する主観評価に与える影響の長期観測」(宮内ら,日本建築学会2025)
若手人材の成長を支える環境づくり
「聞ける空気」が成長を加速する
特に、バイオフィリックデザインの効果が表れやすいのが新入社員や若手社員です。新しい環境で多くのことを吸収する時期は、心身ともに負荷がかかりやすく、不安も感じやすいものです。
疲労がたまりにくく、声をかけやすい雰囲気のあるオフィスでは、「分からないことを聞く」「一緒に考える」といった行動が自然に生まれます。その積み重ねが、成長スピードを高め、早期の自立につながっていきます。
オフィスは人を成長させる基盤へ
人材価値を高める環境づくり
バイオフィリックデザインオフィスは、見た目の改善だけを目的としたものではありません。人の回復を促し、つながりを生み、成長を支える環境的な基盤として、組織の力を底上げする可能性を秘めています。
オフィスは今、「出社する場所」から「人材価値を高める場」へと役割を変えつつあります。自然と調和した空間づくりは、その変化を支える有効なアプローチの一つといえるでしょう。
まとめ
バイオフィリックデザインの本質的価値
バイオフィリックデザインオフィスは、単なる空間演出ではなく、人の認知や感情、行動に働きかけることで、組織全体に多面的な影響をもたらす可能性があります。
自然要素を取り入れた環境は、注意の回復を促し、創造性を引き出し、さらに人と人との関係性をやわらかくつなぎます。その結果として、日々の働きやすさの向上にとどまらず、長期的には人材の成長や組織力の強化にも寄与すると考えられます。
これからのオフィスのあり方
これからのオフィスは、単なる「働く場所」ではなく、人の可能性を引き出す「環境」として設計されていく時代へと進んでいきます。バイオフィリックデザインは、その実現に向けた有力な選択肢の一つといえるでしょう。
株式会社パソナ日本総務部が提供するバイオフィリックデザインソリューション「COMORE BIZ(コモレビズ)」では植栽や音、香り、空気、光といった自然要素をトータルでコーディネートすることが可能なだけではなく、実証実験に基づく科学的エビデンスに基づいた根拠のあるデザインを特長としています。人材獲得競争が激化し、労働力の確保や従業員のパフォーマンス向上、早期成長にミッションをお持ちの経営層や人材開発担当者、総務担当者の方は、ぜひご相談ください。



