バーチャル株主総会とは?種類から必要な準備、事例までご紹介

「バーチャル株主総会」とはインターネットを通じて開催する株主総会で、コロナ禍を契機に導入が進み、現在では一定程度定着しています。主な形式としては、リアル会場での開催を前提にその様子をオンラインで配信する「ハイブリッド型」と、リアル会場を設けずオンラインのみで開催する「バーチャルオンリー型」があります。
この記事ではバーチャル株主総会の種類やメリット、注意点、事例などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
バーチャル株主総会とは
バーチャル株主総会とは、インターネットを活用して実施される株主総会のことです。株主はインターネットを通じて、株主総会の様子をリアルタイムに視聴できるほか、開催形式によっては議決権の行使や質問も可能です。
従来の株主総会では、物理的な会場しかなく株主は決められた日時に会場に足を運ぶ必要がありました。一方でバーチャル株主総会は、インターネット環境が整っていれば遠隔地からでもリモートで参加できるという利便性があります。
コロナ禍のような感染症拡大時の対策としても効果的であり、また、大きな会場の設営が不要になるためコスト削減が期待できることからも注目を集めています。
バーチャル株主総会の種類
バーチャル株主総会には、リアルとオンラインを組み合わせた「ハイブリッド型」と、実際の会場がない「バーチャルオンリー型」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴をご紹介します。
ハイブリッド型
従来型の株主総会とバーチャル株主総会のそれぞれのメリットを兼ね備えているのが「ハイブリッド型」です。
ハイブリッド型株主総会では、リアルな会場で株主総会を開催し、その様子をリアルタイムにオンラインで配信します。コロナ禍を契機に、より多くの株主の参加を期待してバーチャル株主総会に取り組む企業も見られるようになりました。株主としても、複数の企業の株主総会や、遠方の会場で開催される株主総会への参加がしやすくなったと考えられます。
ハイブリッド型株主総会には「参加型」と「出席型」があります。どちらの方式も専用のウェブサイトなどから株主が株主総会の様子を傍聴しますが、参加型では株主による質問や動議の提出、議決権行使が認められていません。一方で出席型は、質問や動議、議決権行使が認められています。ただし、定足数や議決権のカウント、会社側や株主側の通信環境のトラブルも考えられることから、ハイブリッド出席型株主総会の開催には留意すべき点が多いと言えるでしょう。
バーチャルオンリー型
「バーチャルオンリー型」とは、文字通りオンライン上のみで開催するタイプの株主総会です。
株主総会の開催にあたっては、会社の設立・運営・仕組みなどのルールを定める法律である「会社法」によって「株主総会の場所は定めなければならない」とされており、バーチャルオンリー型での開催は難しいとされてきました。しかしその後、2021年に産業競争力強化法が改正・施行され、「場所の定めのない株主総会」を特例的に認める制度が創設されたことにより、バーチャルオンリー型株主総会の開催が可能となりました。
バーチャルオンリー型では、広い会場に株主を招集して株主総会を行う必要がなくなります。企業にとって、リアル会場とバーチャルの両方を行うハイブリッド型よりも、準備や実施にかかるコストの削減につながることが大きなメリットです。
さらに、従来は会場までの距離の問題や時間の都合などで参加できていなかった株主との対話の機会が生まれるケースがあることも、企業経営にとってプラスと考えられます。
ただし、場所の定めのないバーチャルオンリー型株主総会の開催には、さまざまな要件が定められています。具体的には上場会社であること、また、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けたうえで、株主総会を「場所の定めのない株主総会」とすることを定款に定める必要があります。
バーチャルオンリー型株主総会を検討する場合は、事前に余裕をもって経済産業省のホームページなどで要件を確認しておきましょう。
※2026年5月時点の情報です。
バーチャル株主総会を開催するメリット
バーチャル株主総会は、単に開催手段をオンライン化するものではなく、株主との関係性や総会運営のあり方そのものに変化をもたらす可能性があります。従来の物理会場中心の運営と比較して、参加機会の拡大や運営効率の向上、リスク分散といった観点でさまざまな効果が期待されており、企業のガバナンスやIR活動を支える基盤としての役割も注目されています。
ここでは、バーチャル株主総会の導入によって得られる主なメリットをご紹介します。
運営を効率化できる
バーチャル株主総会では、物理会場で必要となる受付対応や誘導などの動線設計が不要となるため、準備から当日運営にかかる事務局の負荷を軽減できます。特に、来場者対応や現地オペレーションに割いていた人的リソースを、進行管理や株主対応など本質的な業務に充てやすくなる点がメリットです。
株主の参加率を高め、コミュニケーションを高度化できる
インターネットを活用することで地理的制約が緩和され、遠隔地の株主も参加しやすくなります。これは、株主間の機会均等という観点からの「株主平等性(遠隔地からでも出席可能)」の確保にもつながります。
また、チャット機能や事前質問の仕組みを活用することで、多様な株主の意見を収集しやすくなり、対話の質を高める基盤として機能することが期待されます。
リスクを分散し、事業継続性(BCP)を強化できる
災害や感染症の拡大などにより物理的な会場開催が難しい場合でも、オンラインを活用することで株主総会の開催手段を確保しやすくなります。これにより、外部環境の変化に左右されにくい運営体制の構築につながり、事業継続性(BCP)の観点からも一定の効果が見込まれます。
コストを削減できる
バーチャルオンリー型を中心に、会場費や設営費、人件費といった物理開催に伴うコストを抑制できる可能性があります。ただし、配信システムやセキュリティ対策などの費用が発生する場合もあるため、導入形態に応じたコスト構造の整理が必要です。
データを活用し、IR・経営を高度化できる
オンラインでの開催により、株主の参加状況や視聴傾向、総会後のアンケート結果などのデータを取得しやすくなります。これらの情報を蓄積・分析することで、株主の関心やニーズの可視化が進み、IR活動の改善や経営判断の精度向上に活かすことが可能になります。
ESG対応とグローバル対応力を強化できる
移動削減や廃棄物レスなどにより、環境負荷の低減につながる点はESGの観点でも評価される可能性があります。また、海外に居住する株主にとっても参加のハードルが下がるため、グローバルな株主構成に対応したコミュニケーション基盤の整備にもつながります。
バーチャル株主総会を開催する際の注意点
バーチャル株主総会は、運営効率の向上や参加機会の拡大といったメリットが期待される一方で、従来の対面開催とは異なる論点への対応が求められます。特に、法的要件や開催形式の整理に加え、システム面や運用面での設計が不十分な場合、総会運営に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、導入にあたっては制度面と実務面の双方を踏まえ、事前に検討すべきポイントを整理しておくことが重要です。ここでは、バーチャル株主総会を開催する際に留意しておきたい主なポイントについてご紹介します。
法的要件や開催形式を整理する必要がある
バーチャル株主総会を実施するにあたっては、開催形式に応じた法的要件や運用ルールの整理が前提となります。特にハイブリッド出席型やバーチャルオンリー型の場合には、会社法上の位置づけや定款の規定、社内規程との整合性を確認したうえで、必要な手続きを事前に整備することが求められます。形式ごとに求められる対応が異なるため、自社の方針に即した開催形態の選定が重要です。
本人確認・議決権行使の仕組みを整備する必要がある
オンラインでの参加を前提とする以上、株主の本人確認や議決権行使の正確性をどのように担保するかが重要な論点となります。なりすましの防止や重複行使の回避に向けて、認証方法やシステム設計を慎重に構築する必要があります。特にバーチャルオンリー株主総会では、総会の成立そのものをオンライン基盤に依拠することになるため、適正なプラットフォームを選定し、安定した運用が可能な環境を整備することが求められます。
システムの安定性とセキュリティを確保する必要がある
バーチャル株主総会では、通信環境や配信システムに起因するトラブルが運営全体に影響を及ぼす可能性があります。そのため、通信障害や配信遅延への備えとして冗長構成やバックアップ体制を検討することが重要です。
また、不正アクセスや情報漏えいを防止する観点から、セキュリティ対策の強化や運用ルールの整備も不可欠です。
公平性を担保した運営体制を設計する必要がある
オンライン環境では、質問や発言の機会が特定の株主に偏るリスクも考えられます。そのため、質問受付の方法や発言の順序、対応方針などについて事前にルールを設計し、透明性のある運営体制を構築することが重要です。株主間の機会均等、すなわち株主平等性の観点からも、誰もが適切に参加できる環境を整えることが求められます。
株主への案内・サポート体制を整備する必要がある
バーチャル株主総会を円滑に実施するためには、株主が迷うことなく参加できる環境づくりが重要となります。ログイン方法や操作手順の事前案内、当日の問い合わせ対応など、サポート体制を整備することで参加ハードルの低減につながります。
また、株主が直感的に操作できるプラットフォームを選定・準備することも、スムーズな運営において重要です。
バーチャル株主総会に必要な準備
バーチャル株主総会を開催するにあたり、どのような準備が必要になるのでしょうか。ここでは、主なポイントを3つご紹介します。
バーチャル株主総会に必要な機器を準備する
バーチャル株主総会を円滑に実施するためには、まず自社に適した総会プラットフォームを選定したうえで、その要件に応じた機器や配信環境を整備することが重要です。プラットフォームによって必要となる機能やシステム構成が異なるため、先に全体設計を行うことで、過不足のない準備につながります。
具体的には、ライブ配信に対応したシステムや撮影・音声機器、株主の本人確認を行うための認証機能、議決権行使をオンライン上で実施できる環境などが挙げられます。また、企業の機密情報や参加者の個人情報を取り扱うことになるため、セキュリティ対策についてもあらかじめ検討しておく必要があります。
加えて、配信の安定性を担保するためには、機器やシステムの準備だけでなく、運用体制の整備も欠かせません。配信中のトラブル対応や進行管理を担う担当者を配置し、事前のリハーサルを通じて運営フローを確認しておくことで、当日の円滑な運営につながります。
バーチャル株主総会の招集通知の送付
株主総会の開催にあたっては、日時や議題などを株主に知らせるための「招集通知」を送付する必要があります。バーチャル株主総会の場合は、これに加えて、株主がオンラインで円滑に参加・出席できるよう、アクセス方法や運用ルールに関する詳細情報をあらかじめ明記しておくことが重要です。特に、リアル会場とは異なり、株主が自らの端末から接続することになるため、必要な情報が不足していると参加機会の確保に影響が生じる可能性があります。
具体的には、以下のような内容を招集通知に記載します。
招集通知に書き加える内容の一例
- オンラインで参加・出席する場合の株主専用サイトのURL、アクセスに必要なID・パスワード
- (参加型の場合)当日に議決権行使が行えない旨の説明
- 議決権行使の方法に関する案内
- 通信障害など、万一のトラブル発生時の対応方針
- (出席型の場合)オンラインでの質問回数や質問の文字数の制限などのルール、動議の取り扱い など
バーチャル株主総会で株主に伝えるコンテンツ(会社紹介、バーチャル展示会など)
バーチャル株主総会では、議事進行だけでなく、株主に対して自社の取り組みや価値をどのように伝えるかという観点も重要となります。オンラインでの開催は、物理的な制約を受けにくい一方で、対面に比べて情報の伝わり方に差が生じる可能性もあるため、コンテンツ設計を工夫することが求められます。
具体的には、会社紹介や事業内容を分かりやすく伝えるための映像コンテンツを用意するほか、製品やサービスの理解を深めるためにバーチャル展示会のような形式を取り入れるケースも見られます。これにより、株主が自社の取り組みを視覚的・直感的に理解しやすくなり、単なる情報提供にとどまらないコミュニケーションの実現につながります。
このように、オンラインならではの表現手法を活用することで、株主との接点を広げつつ、企業理解の促進やエンゲージメントの向上を図ることが期待されます。
バーチャル株主総会支援ならパソナ日本総務部にお任せ
バーチャル株主総会の実施にあたっては、開催形式の設計から当日の運営、さらにはコンテンツ制作やシステム面の対応まで、幅広い業務が発生します。これらを自社のみで対応することは負荷が大きく、専門的な知見や運営ノウハウが求められる場面も少なくありません。
パソナ日本総務部では、「株主総会運営支援サービス」として、準備段階から当日の運営、さらには終了後の振り返りまでを含めたトータルサポートを提供しています。運営計画の立案やマニュアル作成、会場設計・施工、映像音響機器の手配、コンテンツ制作、当日の運営スタッフの手配・教育など、株主総会に関わる業務を一括で支援することが可能です。
また、リアル開催に限らず、バーチャル株主総会についても、専門会社と連携しながら柔軟に対応しており、企業の開催方針に応じた運営体制の構築を支援しています。
さらに、大規模から小規模まで多様な株主総会に対応してきた実績や、イベント運営に精通したスタッフ体制を背景に、コスト面も含めた最適な運営方法の提案が可能です。
加えて、バーチャル展示会などのオンラインイベント手法を組み合わせることで、株主総会の実施にとどまらず、企業理解やブランド価値向上につながる情報発信・企業訴求の強化まで支援することもできます。
このように、株主総会の運営における企画・準備・実施・改善までを一貫して支援できる体制が整っているため、バーチャル株主総会の導入や運営を検討する際のパートナーとして活用することができます。
日本・海外におけるバーチャル株主総会の事例
東京証券取引所のアンケートによると、2025年3月期決算会社において、バーチャル株主総会の開催を予定している企業は全体の18.1%(317社)となっています。一方で、実出席のみでの開催は81.9%(1,437社)と多数を占めています。
また、バーチャル株主総会を開催予定の企業の大半はハイブリッド型であり、内訳としてはハイブリッド参加型が16.4%(288社)、ハイブリッド出席型が0.9%(16社)となっています。これに対し、バーチャルオンリー型は0.7%(13社)にとどまり、導入は限定的です。
このように、バーチャル株主総会は一定程度活用が進んでいるものの、現時点ではリアル開催を前提としたハイブリッド型が中心であり、完全オンライン型の導入は慎重に検討される傾向にあります。
ここでは、実際に日本や海外の企業が行ったバーチャル株主総会の事例を紹介します。
ソフトバンクのバーチャル株主総会事例
通信事業を営むソフトバンク株式会社では、新型コロナウイルス感染症への対応を契機として、2020年からハイブリッド型のバーチャル株主総会に取り組んでいます。従来型のリアル会場での開催に加えて、オンライン配信を通じて株主が視聴できる環境を整備しており、参加機会の拡大に取り組んでいます。
また、将来的なバーチャルオンリー型での開催にも対応できるよう、定款の整備を行い、開催形式の選択肢を確保しています。これにより、感染症の拡大や災害などの非常時においても柔軟に対応できる体制を整えています。
現在はハイブリッド型での開催を継続しつつ、状況に応じた最適な開催方法を選択できるよう備えています。
フォードのバーチャル株主総会事例
米国では、2000年にデラウェア州でバーチャルオンリー型の株主総会が認められて以降、多くの州へと制度が広がり、現在ではオンラインのみで開催する企業も一般的に見られるようになっています。
自動車メーカーのフォード株式会社では、株主総会をバーチャルオンリー型で開催しており、株主は専用プラットフォームにアクセスすることで、総会の視聴に加え、議決権行使や質問の提出を行うことができます。
また、事前および当日の質問受付の仕組みを設けるなど、オンライン環境においても株主との対話機会を確保する運営が行われています。これにより、物理的な制約を受けることなく、株主が参加できる環境を整備している点が特徴です。
まとめ
インターネットを通じたバーチャル株主総会は、より多くの株主とのコミュニケーションを図ることができる手段です。加えて、パンデミックや大規模災害などの非常時の対策としても有効です。
パソナ日本総務部では、イベント支援サービスとして大規模から小規模まで、多様な株主総会の企画・運営をサポートしています。リアル会場での開催実績はもとより、各分野の専門会社との連携によってバーチャル株主総会の円滑な開催も支援しています。この機会に、バーチャル株主総会の検討を始めてみてはいかがでしょうか。



