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2024年09月19日 配信
2025年09月02日 更新

防災訓練は企業の義務!実施すべき訓練を押さえよう

防災訓練は企業の義務!実施すべき訓練を押さえよう
防災,BCP

火災や地震などの災害はいつどこで発生するか予測できないため、日頃から備えておく必要があります。とくに企業は災害時に従業員や顧客の命を守る責任があるため、いざというとき適切な行動が取れるよう年に1回以上、防災訓練をすることが義務付けられています。

そこで今回は、企業の防災訓練が義務化されている理由をはじめ、防災訓練の重要性や具体的な訓練内容を解説します。あわせて、低コストで場所・時間を選ばずにできる「バーチャル防災訓練」についてもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

企業の防災訓練は義務?根拠となる法律を解説

企業の防災訓練は、従業員や顧客の安全を守るための重要な取り組みであると同時に、法律によって定められた義務でもあります。ここでは、その根拠となる法律と、自社がどの対象に当てはまるのかを具体的に解説します。

根拠となる法律(消防法・労働契約法)

企業の防災訓練義務の主な根拠は「消防法」と「労働契約法」です。

  • 消防法: 一定規模以上の建物の管理者に対し、防火管理者などを定め、消防計画を作成し、それに基づいた消火、通報、避難などの訓練を定期的に実施することを義務付けています。(消防法第8条 第36条/施行規則第3条10・11項)

  • 労働契約法: 企業(使用者)は、従業員(労働者)が安全な環境で働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。(労働契約法 第5条)災害時の安全確保もこれに含まれ、防災訓練の実施はその具体的な表れの一つと言えます。

これらの法律に基づき、企業は従業員の安全を守るための訓練を計画・実施する責任があります。

【要チェック】訓練の対象となる建物と法的な実施頻度

ほとんどの事業所は、消防法に基づき防災訓練を実施する義務があります。訓練の頻度は、建物の用途によって主に以下の3つに分類されます。

分類 主な用途 訓練頻度
特定用途防火対象物 飲食店、百貨店、ホテル、病院、福祉施設など、不特定多数の人が出入りする施設 年2回以上
非特定用途防火対象物 事務所、工場、倉庫、学校、図書館など、利用者が限定されている施設 年1回以上
複合用途防火対象物 上記の特定用途と非特定用途が混在するビル(例:1階が飲食店、2階以上がオフィスのビル) 建物全体が特定用途と見なされ、年2回以上必要になる場合が多い

特に注意が必要なのは「複合用途防火対象物」です。自社が事務所(非特定用途)であっても、同じビル内に飲食店や店舗(特定用途)が一つでも入居している場合、ビル全体として厳しい基準が適用される可能性があります。自社が入居するビルの管理会社や所轄の消防署に確認し、正しい実施回数を把握しておくことが重要です。
なお、高層ビルや大規模な地下街など、特にリスクが高いとされる大規模な建物は「防災管理対象物」に指定され、地震なども含めた総合的な訓練計画の策定や、年1回の点検・報告といった、より重い義務が課せられます。

防火管理者などに求められる主な義務

訓練義務のある事業所では、選任された防火管理者などが中心となって以下の業務を遂行する必要があります。

  • 防火(防災)管理者の選任・届出: 資格を持つ者を選任し、消防署へ届け出ます。

  • 消防計画の作成・届出: 火災や地震などを想定し、情報連絡、避難誘導、消防隊への協力といった具体的な行動計画を作成し、消防署へ届け出ます。

  • 自衛消防組織の設置: 消防計画に基づき、災害時に初期対応を行うための組織を社内に設置します。

  • 訓練の実施: 作成した消防計画に基づき、消火、通報、避難などの訓練を計画し、定期的に実施します。

  • 点検・報告: 特に大規模な「防災管理対象物」の場合、年1回、資格者による点検と消防機関への報告が義務付けられています。

これらの義務を果たすことが、万が一の際に組織的な対応を可能にし、被害を最小限に抑えることにつながります。

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万が一に備えよう!防災訓練の重要性

防災訓練は企業にとって非常に重要な活動であり、実施すべき理由には義務であること以外にも以下の3つが挙げられます。

1.従業員・顧客の命を守るため

災害時に重要なのは「人命を守ること」であり、企業には従業員と顧客の命を守る責任があります。
さまざまな災害を想定して防災訓練を実施すれば、従業員が「自分自身や顧客の安全を確保するにはどうすれば良いか」「どこに避難するのが望ましいか」などを考えるようになるため、非常時に適切な判断を下せるようになります。これにより、災害が起きたときに従業員自身の安全はもちろん、顧客の命も守ることができます。

2.顧客への損害を回避するため

災害が発生し事業が停滞した場合、「納品物の製作が納期に間に合わない」「顧客への商品・サービスの提供ができない」といった問題に直面することがあります。非常事態なので仕方ない部分もありますが、企業としては可能な限り事業を継続し、顧客への損害は最小限に抑えたいものです。
防災訓練を実施すれば、災害時の顧客対応をあらかじめ検討できるため、顧客が負う可能性のある損害を最小化することができます。

3.事業を継続させるため

災害により事業が停滞すると、上述したように顧客への損害が懸念されます。もちろん自社にとっても大きなダメージとなり、事業の継続・再開が困難になると売上が下がることもあるでしょう。
防災訓練の一環としてBCP(事業継続計画)の策定を行えば、災害発生時の損害を最小限に抑え、迅速に事業を復旧させることが可能です。これにより、売上の減少を回避できるほか、取引先からの信頼度や顧客満足度が向上することも期待できます。

企業の防災訓練の計画から実施・改善までの5ステップ

効果的な防災訓練は、行き当たりばったりではなく、計画的な準備と実施後の改善が不可欠です。ここでは、担当者がすぐに取り組めるように、訓練を成功に導くための5つのステップを解説します。

ステップ1:訓練計画の立案とテーマ設定

まずは訓練の全体像を描きます。以下の項目を具体的に定め、「訓練計画書」として文書にまとめましょう。

  • 目的: 今回の訓練で達成したいこと(例:新規入社者への避難経路の周知、初期消火スキルの習得)

  • 日時と場所: 業務への影響を考慮し、具体的な実施日時と避難場所を決定

  • 参加対象者: 全従業員、特定の部署、自衛消防隊など

  • 訓練のテーマ・想定: 「震度6強の地震発生」や「給湯室からの出火」など、具体的でリアリティのあるテーマを設定

  • 連携機関: 必要に応じて、消防署やビルの管理会社との連携を計画

ステップ2:具体的なシナリオ・マニュアルの作成

ステップ1で決めたテーマに基づき、当日の動きを時系列で記した「シナリオ」を作成します。誰が、いつ、何をするのかを具体的に記述することで、訓練がスムーズに進行します。
また、既存の防災マニュアルが今回の訓練の想定に対応しているかを確認し、必要があれば修正・追記を行いましょう。

ステップ3:役割分担と従業員への周知

シナリオに沿って、各従業員の役割を明確に割り振ります。

  • 統括指揮班: 全体の指揮、状況判断

  • 情報連絡班: 館内放送、消防への通報、安否情報の集約

  • 初期消火班: 消火器による初期消火活動

  • 避難誘導班: 避難経路の確保、従業員の誘導

  • 応急救護班: 負傷者の応急手当

役割を定めたら、訓練の日時、目的、各自の役割などを事前に全従業員へ周知し、当事者意識を高めてもらうことが重要です。

ステップ4:防災訓練の実施

当日はシナリオに基づいて訓練を実施します。安全管理を最優先し、無理のない範囲で行いましょう。ただシナリオをなぞるだけでなく、参加者の動きや課題点を記録しておくことが、次のステップにつながります。

ステップ5:実施後の振り返りと改善(PDCA)

訓練は実施して終わりではありません。参加者へのアンケートや関係者での反省会を実施し、「良かった点」と「改善すべき点」を洗い出しましょう。

  • マニュアル通りに動けたか?
  • 情報伝達はスムーズだったか?
  • 避難経路に問題はなかったか?
  • 役割分担は適切だったか?

これらの結果を基に防災マニュアルや訓練計画を見直し、次回の訓練に活かすことで、企業の防災力は継続的に向上していきます。

要チェック!企業が実施すべき防災訓練の例

要チェック!企業が実施すべき防災訓練の例 消火器

企業が実施すべき防災訓練は複数あり、以下は主な訓練内容の例です。

通報訓練

火災が発生したり重傷病者がいたりするケースを想定して、速やかに関係機関に通報する訓練です。
消防・救急の要請は一刻を争います。非常時に躊躇なく速やかに通報できるよう、消火・救急の通報の基準を学ぶと同時に、実際の通報練習を行いましょう。

消火訓練

火災発生時における初期消火の重要性や消火器の準備・使い方、消火活動について学びます。
消火器の使い方をマニュアルにまとめている企業は多いかもしれませんが、それだけでは不十分です。実際に消火器を手にして使ってみることで、はじめて手順を実践的に理解できます。消防車が到着するまでに従業員で適切な初期消火ができるよう、訓練を通して備えておきましょう。

避難訓練

火災や地震の発生を想定して、安全を確保しながら被害が及ばない場所まで避難する訓練です。具体的には、適切な避難経路を選定したり、非常口を確認したり、避難行動を演習したりします。
避難訓練を行う際は、災害発生時に咄嗟に身を守るためのシェイクアウト訓練も同時に実施しましょう。そうすることで、非常時に一人ひとりがパニックに陥らず適切に対処できるようになります。

応急救護訓練

災害時に負傷者が発生したことを想定して、救護方法や搬送方法を学び習得する訓練です。人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生法のほか、AEDの使い方などを学びます。
平時の東京23区では、救急車が来るまで平均7~8分ほどかかると言われています。場合によっては救急車がなかなか来ないこともあるので、訓練を通して現場にいる人たちで応急救護ができる体制を整えておきましょう。

安否確認訓練

災害発生後に従業員の安否を確認する訓練です。具体的には、災害時を想定し安否確認システムなどで企業から安否確認の連絡を入れて、従業員に応答してもらいます。
訓練では、安否確認の連絡が従業員のもとへきちんと届き、従業員が問題なく回答できるかどうかを確認することが目的となるので、全従業員に必ず回答してもらうようにしましょう。

情報収集訓練

災害時に必要な情報を迅速かつ正確に収集するための訓練です。被害の規模によってはインターネットや電話の回線が混雑・途絶することも考えられるため、非常時の情報収集の方法を確認しておきましょう。

低コストで場所・時間を選ばずできる「バーチャル防災訓練」のすすめ

従業員の命を守るため、そして事業を継続させるためにも、万が一に備えて防災訓練を行うことは非常に重要です。しかし、なかには「人員・時間が限られる中で効果的な訓練が難しい」「訓練内容が毎年同じでマンネリ化している」といった課題を抱えている企業もあるでしょう。
そこで、おすすめしたいのがパソナ日本総務部の「バーチャル防災訓練」と「そなトレ」です。

バーチャル防災訓練とは、仮想空間上で災害シナリオを再現し災害時の適切な対応を学ぶ、新しい訓練方法です。インターネット環境があれば場所や時間を選ばずに訓練ができるので、従業員の業務スケジュールに合わせて防災訓練を実施することができます。
また、VRだからこそ災害状況をリアルに再現できるほか、昼夜などさまざまなシチュエーションで訓練できるため、マンネリ化からも脱却しやすいでしょう。

※バーチャル防災訓練の法令上の扱いについては、自治体の消防署で異なります。

また、『そなトレ』では、従業員の防災・減災能力を向上させるためのeラーニングサービスを提供しています。教材学習、VR体験、そして確認テストを組み合わせることで、従業員一人ひとりの防災・減災意識を高め、組織全体の危機対応能力を強化します。

防災訓練における課題を解決しながら、従業員の防災意識を高め、効率良く実践に近い訓練を行うなら、ぜひ「バーチャル防災訓練」や「そなトレ」の利用をご検討ください。

企業の防災訓練に関するよくあるご質問

防災訓練に関して、担当者の方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

参加率が低いのですが、どうすればよいですか?

まず、防災訓練が法律で定められた企業の「義務」であり、従業員にも参加する責任があることを経営層から明確に発信することが重要です。その上で、訓練のマンネリ化を防ぐ工夫も効果的です。例えば、毎回想定を変える、VRなどの新しい技術を取り入れる、起震車を体験するなど、参加者が「自分ごと」として捉えられるようなプログラムを企画しましょう。

リモートワークの従業員がいる場合の訓練方法は?

全員がオフィスに集まることが難しい場合、複数の訓練を組み合わせるのが有効です。

・安否確認訓練: 安否確認システムを用いて、全従業員(リモートワーカー含む)を対象に一斉に実施します。
・オンライン防災研修: eラーニングやWeb会議システムを活用し、在宅でできる防災対策(家具の固定、備蓄など)や、災害時の情報収集方法について研修を行います。
・在宅での安全確保行動(シェイクアウト)訓練: 地震発生を想定し、指定した日時に各自がその場で「まず低く、頭を守り、動かない」という安全確保行動をとる訓練です。


オフィス出社者には従来の避難訓練を行い、リモートワーカーにはこれらの訓練を実施するなど、ハイブリッドな計画を立てることが求められます。

訓練の時間を確保するのが難しいです。

全ての訓練を一度に長時間行う必要はありません。例えば、「今月は安否確認訓練」「来月は初期消火訓練」といったように訓練内容を細分化し、短時間で定期的に実施する「ショート訓練」も有効です。短時間でも継続的に行うことで、防災意識を風化させずに維持することができます。

まとめ

まとめ メガホンとヘルメット

企業における防災訓練は義務であると同時に、従業員と顧客の安全を守り、事業の継続を支える重要な活動です。万が一に備えて万全の体制を整えておくためにも、自社に合った実践的な防災訓練を年に1回以上は実施するようにしましょう。
効率性と低コスト、マンネリ化防止に重きを置いて防災訓練を実施したい場合は、バーチャル防災訓練に目を向けるのがおすすめです。この機会にぜひ利用を検討してみてください。

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