オフィスビル経営を再定義する「バリューアップ」とは?共用部とバイオフィリックデザインが生む“選ばれる理由”

オフィスビル市場は、価格に加えて「選ばれる理由」が問われる時代へと移行しています。その中で重要性を増しているのが、ビル全体の体験価値を高めるバリューアップ戦略です。なかでも共用部の質は、テナントの意思決定や満足度に直結する収益ドライバーとして注目されています。
さらに近年、その体験価値を高める有効な手法として「バイオフィリックデザイン」が脚光を浴びています。
本コラムでは、共用部の価値を再定義するとともに、バイオフィリックデザインを掛け合わせることで実現する「選ばれ続けるオフィスビル」のあり方について解説します。
“選ばれるビル”を生むバリューアップ
構造的二極化が進むオフィス市場
オフィスビル市場はいま、「構造的な二極化」の局面に入っています。
オフィス回帰や人材獲得競争の激化といった背景を受け、東京23区の好立地エリアにおいて旺盛なオフィス需要がある一方で、すべてのビルが恩恵を受けているわけではありません。
「価格」+「価値」で選ばれる時代へ
リモートワークの普及や働き方の多様化により、「ただ働く場所を提供するだけのオフィス」では選ばれなくなりました。
かつてのように「築古だから賃料を下げる」「新築だから高く取れる」といった単純な価格競争ではなく、近年は賃料そのものが下がりにくい市場環境が形成されています。建設費や人件費の高騰による新規供給の抑制、出社回帰や人材獲得競争を背景とした需要の回復により、都心部では空室率が低水準で推移し、需給は引き締まった状態が続いています。さらに、運営コストや金利の上昇によってオーナー側の収益構造も変化し、「下げて埋める」という選択が取りにくくなっています。
その結果、現在の二極化は「賃料の高低」だけではなく、「選ばれ続けるビル」と「比較検討の段階で外されるビル」との分断として顕在化しています。つまり市場は、価格調整による競争から、体験価値や環境価値といった“付加価値”で選ばれるかどうかを問うフェーズへとシフトしているのです。
そこでカギとなるのが、単なる改修ではなく、価値そのものを再設計する「バリューアップ」という考え方です。
なぜ今「共用部」が収益を左右するのか
評価の決め手は「無意識の接点」
従来、バリューアップといえば専有部の改装や設備更新に焦点が当たりがちでした。しかし現在、テナントが重視するのは「ビル全体の体験価値」です。
特に注目すべきは、エントランス、エレベーターホール、トイレ、給湯室といった共用部です。
これらはテナント企業の従業員や来客が日常的に接する空間であり、“無意識の評価”が行われる重要な接点です。
実際、内覧時の意思決定においては、共用部が評価の大きなウェイトを占めるとされており、エントランスや水回りの印象が弱いだけで選ばれないケースも珍しくありません。
投資対効果が大きい共用部の改善
共用部の改善は比較的投資額を抑えながらも、ビルのグレード感を大きく引き上げることが可能です。その結果として、
- 内覧時の成約率向上
- 空室期間の短縮
- 賃料水準の維持・向上
- 既存テナントの退去抑制
といった、収益に直結する効果が期待できます。
共用部は、テナント満足度を通じて収益に影響する重要な要素として注目されています。
「働きたくなるビル」が選ばれる時代へ
機能から体験価値へ
冒頭にもあるように、オフィスの価値は「機能」から「体験」へとシフトしています。
企業がオフィスに求めるのは、単なる作業場所ではなく、
- 従業員のモチベーションを高める場
- コミュニケーションを誘発・促進する場
- ブランドを体現する場
といった、人の行動や創造性に直接影響を与える空間です。
つまり、共用部の質を高めることは、単なる見た目の改善ではなく、テナント企業の生産性や企業価値そのものに貢献する施策なのです。
バイオフィリックデザインという「次の差別化軸」
自然と人をつなぐ設計思想
こうした体験価値を飛躍的に高める手法として、いま注目されているのが「バイオフィリックデザイン」です。
これは、人間が本能的に自然とつながりを求める性質に基づき、空間に自然要素を取り入れる設計手法です。植物、自然光、木材、水、風などを活用し、人間にとって心地よい環境を創出します。バイオフィリックデザインの効果はさまざまな研究がされており、一般的には
- ストレスの軽減
- 幸福度の向上
- 集中力・認知機能の向上
- 生産性や創造性の向上
といった効果をもたらすことが、多くのレポートで示されています。
「演出」ではなく「投資」
さらに、ワークプレイス内にバイオフィリックデザインを取り入れた実証研究では、リラックス感の向上やコミュニケーションの質向上といった効果も確認されています。
つまりバイオフィリックデザインは、単なる“見栄えを整える演出”ではなく、人のパフォーマンスを高める「科学的投資」といえるのです。
このような設計思想を、オフィスビルの共用部を含む「働く環境」に対して最適化・具現化するのが、パソナ日本総務部が提供する、バイオフィリックデザインソリューション「COMORE BIZ(コモレビズ)」です。コモレビズでは、さまざまな研究パートナーと共に、植物や自然音がワーカーに与える影響について研究を行っています。実験から得られたエビデンスに基づいて設計を行うことで、差別化を一層強化する共用部の実現が可能となります。
共用部×バイオフィリックで実現する価値の最大化
なぜ共用部こそ最適か
バイオフィリックデザインを取り入れるエリアとして、実は最も多くの人が、最も無意識に体験する場所である共用部こそ最も投資効果の高い領域といえます。
例えば:
■ エントランス
グリーン・自然光・香りを組み合わせ、五感で印象づける「ブランドの入り口」へ。
来訪者にはほかのビルよりも記憶に残る体験、従業員にとっては「気持ちを切り替えモチベーションをあげる空間」に。
■ エレベーターホール
木質素材や有機的デザインにより、待ち時間をリラックス体験へ転換する。
■ トイレ
バイオフィリックデザインと組みあわせることで、従来の「設備」から、「回復・集中・ひらめきのための空間」へ再定義。
■ 給湯室・共用ラウンジ
グリーンと家具を一体設計し、偶発的コミュニケーションを誘発するマグネットスペースへ。
これらの積み重ねが、ビル全体のブランド力を形成します。
また、環境配慮・ウェルビーイングへの対応はESG観点でも評価され、単なる快適性向上のみならず、投資価値の向上やテナント層の高度化にもつながります。
まとめ:バリューアップは“ビル経営の再起動”
これからのオフィスビル経営において重要なのは、「古いか新しいか」ではなく、「今のニーズに応えているか」です。
• 現状維持では競争力は維持できない
• 共用部の質が意思決定を左右する
• バイオフィリックデザインが体験価値と生産性を引き上げる
これらを踏まえたバリューアップは、単なる改修ではなく、ビルの価値を再定義する“経営戦略”です。
専有部だけでなく、日常的に触れる共用部にこそ投資する。
そして、人の感性と科学の両面から価値を高める。
その先にあるのは、「選ばれる理由を持つビル」という、持続的な競争優位です。
コモレビズでは、こうした“体験価値”視点のバリューアップを通じて、オフィスビルの新たな可能性を提案しています。



