企業における減災とは?防災との違いも解説
企業における減災とは?防災との違いも解説

近年、異常気象などで「想定外の」「これまでに経験がない」大規模災害が立て続けに発生しています。「防災」をすることはもちろん大切ですが、日本はそれだけでは対応しきれない状況におかれていると言えます。 そこで、「防災」とあわせて「減災」という考え方が徐々に広がりを見せています。 今回は減災とは何か、普段から企業で行うべき減災対策にはどのようなものがあるのか、中小企業が減災対策として防災設備に投資をした場合に受けられる優遇税制などについてご紹介します。
減災とは?
減災という考え方は、「災害が発生すること」を前提としています。政府の中央防災会議は、「防災基本計画」のなかで「災害の発生を完全に防ぐことは不可能である」「できるだけその被害を軽減していくことを目指すべき」としました。
災害が起こることを前提に、災害による被害をできるだけ小さくするための取り組みが減災です。
減災と防災の違いとは
「減災」と「防災」の違いは、災害の発生を前提にしているかどうかにあります。
減災は、「災害が起こること」を前提に、その被害をできるだけ小さくするための取り組みです。
一方の防災は、「災害を起こさない」「災害が起きても被害を出さない」ための備えや対策を指します。
防災によって被害を未然に防ぐ努力はもちろん欠かせませんが、高齢化の進行や地域コミュニティの弱体化など、さまざまな課題を抱える日本では、災害が発生した際のリスクや脆弱性も考慮し、減災の取り組みにも力を入れることが重要です。
災害発生前にやっておくべき7つの減災対策(内閣府推奨)
災害発生前の減災対策で重要なのは、どのような災害が起こりうるかをできる限り想定し、その想定に対する備えをしておくことです。
ここでは、具体的に災害発生前にやっておくべき備えを、内閣府が推奨する減災のアイデアと照らし合わせつつご紹介します。
1.公助だけでなく「自助」「共助」を意識する
減災において大切となるのが「自助」「共助」を意識することです。「自助」は行政の手による「公助」に頼るだけでなく自分の命を自身で守ること、「共助」は身近な人同士で助け合うことを指します。
災害の発生時だけでなく、普段から防災意識を持ち事前の準備を怠らないことが、有事の際の被害を最小限にとどめ、身の回りの方々を救うことにつながります。
2.行動範囲内の安全性・避難経路の確認
自助への取り組みのひとつとして日ごろからハザードマップなどを活用し、自分の行動範囲内において、どこでどんな災害が起きやすいのかという危険地域の確認をしておきましょう。同時に自宅や勤務先の安全性についても確認をして、必要な対策を立てておきます。
また家やオフィスからの避難経路を確保しておくことも重要です。大型家具の下敷きにならないように家具の固定や耐震マットの設置、またガラス片などに避難経路を阻まれないよう避難用の靴を身近なところに置いておくことなどをおすすめします。
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3.「地震に強い建物」を意識する
減災において災害対策と同様に重要なのが、地震に強い建物を意識することです。建物の強さは、地震による被害の大きさを決める要素のひとつです。
1981年には耐震基準法が一新されましたが、それより前に建てられたものは古い耐震基準に沿って建築されているため、地震に対する強度が足りない場合があります。耐震診断を受けて、結果に応じた補強をすることが必要です。
1981年以降は従来よりもさらに厳しい基準をクリアした建物のみが建造されるようになりましたが、新耐震基準を満たしている場合でも、経年劣化によって耐久性が低下している場合があります。
減災を意識するうえでは、自宅やオフィスの状態をよく確認し、こまめな整備点検を実施することが大切だと言えます。
4.家具の固定による「安全空間」の確保
あわせて意識したいのが、家具やオフィス什器の固定による安全確保です。キャビネットや複合機などの大きな家具や什器は、災害発生時の避難経路確保の妨げや、けがの発生など二次被害の原因にもなります。そのため、ある程度の高さや重さがある場合は必ず天井や壁、床などに固定し、有事に安全空間が確保できるようにしておきましょう。場合によっては配置場所の変更や、家具や什器自体を入れ替える検討も重要です。
5.備蓄の確認
災害発生時に命を救うための備えだけでなく、生き延びるための備えも必要です。防災用品をまとめた非常持ち出し袋や、ライフラインが止まったときの備えとして食料・飲料水・携帯トイレなどの備蓄を準備しておくことをおすすめします。
備蓄は定期的に点検をして賞味期限切れのものはないか、環境や生活様式の変化に沿った備蓄ができているかなどという点を確認することも忘れてはいけません。
また、いざという時のための備蓄には「ローリングストック法」を用いるのがおすすめです。
ローリングストック法とは、災害時のための備蓄品を日常的にストックしておき、期限が来る前に古いものから消費して、消費した個数分だけ新しいものを購入する備蓄法のことです。
ローリングストック法を活用することで、備蓄品の入替えの手間を意識せずに災害時への備えができるだけでなく、期限切れによる廃棄ロスも削減できます。
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首相官邸が公開している食料・飲料・その他必需品の備蓄について、下記の表にまとめました。
1人分の備蓄品の目安
- 飲料水
- 1人1日あたり3リットル×3日分
- 非常食
- ご飯、乾パン、缶詰など合わせて3日分
- その他
- ・携帯トイレ・簡易トイレ
・トイレットペーパー
・ティッシュペーパー
・マッチ
・ろうそく
・カセットコンロ:1週間あたり6本 など
通常、3日分程度の備蓄品があれば、物資の供給が絶たれた状態でも助けが来るまでの期間を乗り越えられる可能性が高いと言われています。
しかし大規模災害が発生した際は、1週間分の備蓄があることがより望ましいとされています。発災後、1週間あれば多くの被災地において救援隊が現地入りできるようになり、最低限の救援物資などが入手できる状態になることが多いと考えられるためです。
なお、備蓄食料は主食、主菜、副菜などをバランス良く備蓄することが大切です。
1人分の食料の備蓄例
- 主食
- 米(アルファ米)、パスタ、カップ麺、乾パン など
- 主菜
- 肉、野菜、豆などの缶詰×9缶
レトルト食品×3個
カレーの素など×9個
- 副菜、果物
- 果物の缶詰、ドライフルーツ など
- その他
- お菓子などの嗜好品
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6.連絡手段の確認(家族での防災会議)
あわせて、災害発生時に家族とどうやって連絡をとるのかを、事前に家庭内でも決めておきましょう。
というのも、会社の就業時間内に大規模な地震が発生した場合には、帰宅困難者の一斉帰宅による救命・救助活動、消火活動など応急活動への妨げを防止するため、企業の施設内に一定期間留まることが求められる場合があるためです。
災害発生時に、やみくもに行動することによる二次災害を防ぐために必要な減災対策だと言えます。
7.日ごろからのつながりを大切にする
日ごろ過ごす自宅やオフィスの周囲には、心身にさまざまなハンディキャップを抱えて暮らしている方も多くおられます。お年寄りやお子様、障がいを抱える方々と有事の時に助け合えるように、日ごろから積極的なコミュニケーションを意識しておくことも減災につながります。
「災害時要援護者」の方々を支援するためのポイント
前述した通り、減災を考えるうえでは高齢者や児童、心身に障がいがある方々などへの配慮も重要になります。そのほかにも外国人の方や妊婦の方など、災害発生時の自助が難しい方々を包括して、内閣府では「災害時要援護者」と定義しています。そのような方々をフォローするためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
まずは身の回りの要援護者の方々を把握する
まず重要となるのが、「身の回りに要援護者となる方々がいるかどうか」です。たとえば、近隣に介護施設がある場合には高齢者の方々が一定数以上おられることが想定されますし、保育所や小学校がある場合には児童が相当数集まっていることが予測できます。
外国人やハンディキャップを抱える方々と一緒に働く職場も、現在では当たり前です。そのような方がどの程度おられるかを、あらかじめ把握しておくことが重要です。
「災害時要援護者」の方々の把握は企業のリスク管理として重要
市町村においては2006年制定の「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」や2013年の「災害対策基本法改正」をきっかけとし、上述した方々のうち災害発生時の避難等に、特に支援が必要な方についての名簿作成が義務付けられています。デリケートな問題ですが共助の観点からも、企業は従業員の心身におけるハンディキャップの程度について把握しておくと良いでしょう。
「災害時要援護者」の方へのアプローチ方法
「災害時要援護者」の方へのアプローチ方法として、たとえば聴覚障がいを抱える方には音声以外での情報伝達方法をあらかじめ準備しておく、視覚に障がいを抱える方には環境変化に伴う対処方法を正確に伝えるなどがあります。ほかにも車いすを利用していても移動可能な避難経路づくりや、環境の変化が強いストレスの原因となり得る知的障がいや精神障がいを持つ方への対応に配慮する意識も大切です。
また、外国人の方々については、日本語だけでは状況が十分に把握できないことも想定されるため、母国語をはじめ利用者の多い英語などで事態を伝えられる環境づくりも必要となるでしょう。
外見からは読み取れない、身体の内部にハンディキャップを抱える内部障がいを持つ方には、どのような配慮をすべきか当人に確認するのもひとつの方法です。
ほかにも災害状況をうまく把握できない児童には、危険をわかりやすく伝えることが重要になります。また体力面に不安を抱える高齢者や妊婦の方にも、負担になりにくい避難の対応が求められるでしょう。
災害時要援護者の方は数多くおられますが、どのような助けが必要なのかは人によって異なります。そのような方との「共助」のためにできることを事前に模索することこそが、減災において求められる姿勢であると考えられます。
企業に求められる減災対策
ここでは、企業に求められる減災対策をご紹介します。
BCPを策定・運用する
企業にとっての減災対策は、災害による事業への影響を最小限に抑えることを目的としています。その中心となるのが、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定と運用です。BCPは、災害や事故などの緊急事態が発生した際に、重要業務を継続または早期に復旧させるための行動計画です。平常時からリスクを想定し、代替手段の確保や従業員への周知・訓練を行うことで、被害の拡大を防ぎ、企業としての信頼と持続性を守ることができます。
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従業員の安全確保・安否確認をする
災害発生時に最優先すべきは、従業員の安全を守ることです。企業はまず、避難経路や避難場所の明確化、安否確認体制の整備など、従業員が迅速かつ安全に行動できる環境を整える必要があります。たとえば安否確認システムを導入し、実際に稼働させる訓練を行うことで、緊急時の連絡手段を確実に機能させることができます。また、災害直後の対応だけでなく、帰宅困難時の支援物資の備蓄や連絡手段の確保など、従業員の安心につながる体制づくりも重要です。
データを保護しシステムを冗長化する
災害によってオフィスやサーバーが被災すると、業務データの消失やシステム停止といった深刻な影響が生じます。こうしたリスクに備えるためには、データのバックアップやクラウド活用などによる保護体制を整えることが重要です。また、サーバーや通信機器を複数拠点で運用するなど、システムを冗長化しておくことで、一部の設備が被災しても業務を継続できます。データ保全とシステムの強靭化は事業継続の基盤であり、企業の信頼を守るうえでも欠かせない減災対策です。
社内教育や防災訓練を実施する
企業が災害リスクに備えるうえで、従業員一人ひとりの意識を高め、実効性のある行動が取れるようにする“教育と訓練”は欠かせません。まず、平常時から社内で防災・減災に関する知識を体系的に学ぶ体制を整えましょう。
たとえば、パソナ日本総務部の「従業員向け防災eラーニングサービス『そなトレ』」を導入すれば、教材学習+VR体験+確認テストという3段階で、地震・火災・水害・応急手当などの災害に対する「判断力」「行動力」を従業員が培うことができます。さらに、訓練としてはリアルな体験を伴うプログラムが効果的です。
また「バーチャル防災訓練」を活用すれば、VR/AR技術により仮想空間で災害シナリオを再現し、時間・場所を選ばず避難や消火などの訓練を実施できます。こうした訓練を定期的に実施することで、いざという時の混乱を抑え、対応のスムーズ化につなげられます。
こうして、教育によって“知る”から“できる”へ、訓練によって“できる”を“実践できる”へと高めていくことが、企業の減災力を上げるための鍵になります。社内の防災体制を強化し、従業員とともに安心・安全な職場づくりを進めましょう。
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企業における減災対策事例
株式会社ローソン(以下、ローソン)は、ライフラインの一部としての使命を果たせるよう減災対策に取り組んでいます。
各地域で大規模災害が発生した場合は、お客様・従業員およびその家族の安全を確実なものとしたうえで、災害時においても店舗の営業を継続できるよう努めるというのがローソンの基本方針です。自治体と連携して被災地に救援物資を送ったり、店舗での救援募金活動を行ったりする旨もうたっています。
阪神・淡路大震災のときにも、ローソンの各店舗は被災直後も看板に明かりを灯して地域に安心感を与え、一部の店舗は被害を受けた当日に営業を再開しました。フェリーやヘリコプターを駆使した救援物資の搬送や本部の応援部隊などの活躍もあり、震災の3日後には被災地にある273店舗のうち260店舗をオープンさせています。
具体的な減災対策としては、年数回の訓練、災害対応マニュアルに災害種類ごとの初動対応・復旧行動基準などについて明記、各地の地方自治体などと「災害時物資調達協定」を締結するなどの取り組みを行っています。
減災対策に取り組む中小企業に対する優遇税制
中小企業が防災・減災のための設備投資を行う際に活用できる制度として、「中小企業防災・減災投資促進税制」があります。これは、中小企業等経営強化法に基づき、災害リスクへの備えを目的として策定した「事業継続力強化計画」または「連携事業継続力強化計画」が国の認定を受け、その計画に記載された対象設備を認定日から1年以内に取得・事業に使用した場合に、特別償却の税制措置を受けられる制度です。
対象となる事業者は、令和9年3月31日までに上記いずれかの計画の認定を受けた中小企業者です。現在は、取得価額の16%を特別償却できる優遇措置が設けられています。また対象となる設備は、災害時に事業活動への影響を軽減するための減価償却資産であり、たとえば自家発電設備や止水板、耐震装置などが含まれます。
こうした制度を活用することで、中小企業は自社の防災・減災体制を強化しながら、税制面でも支援を受けることが可能です。
パソナ日本総務部にできること
企業の減災対策として、日ごろから防災備蓄品を整えておくことは非常に有効です。しかし、適切な防災備蓄品を選定し、定期的に点検・補充を行い、賞味期限切れの食品などを出さないよう管理するには、多くの手間と時間がかかります。
パソナ日本総務部では、こうした課題を解決するために防災備蓄品の新規購入・管理、賞味期限切れが近い食品の回収をワンストップでお引き受けする「防災備蓄品ワンストップサービス」を提供しています。
回収した食品は連携しているNPO法人が引き取って再活用するなど、食品ロス削減の観点からも安心してご利用いただけるサービスです。
さらに、企業のニーズに合わせて、防災備蓄品の管理業務を代行・アウトソーシングする「防災備蓄品管理BPOサービス」も展開しています。「そなトレ」や「バーチャル防災訓練」とあわせて、備え・教育・運用のすべてを総合的にサポートできるのが、パソナ日本総務部の強みです。
まとめ
どれだけ防災対策をしていても災害は起こりうるものです。また、その発生頻度や発生リスクは近年ますます増大しています。
大規模災害が起きたときに命が守れるよう、または企業としての使命を果たせるようにするためには日ごろからの備えが大切です。防災と減災の両方に取り組んで、リスクの軽減を図りましょう。




